20200424
この件については、WHOは根拠がないとしている。
一般向けにはTBSラジオ「久米宏 ラジオなんですけど」(4月11日13:00~)で紹介されたのが比較的早かったと思う。
かつて「ニュースステーション」でコメンテーターを務めた元朝日新聞論説委員で現在、スペインのバルセロナで豆腐店を営む清水建宇(たてお)さんから届いたメールによると、日本はスペインの2倍の人口なのに、なぜ新型コロナウイルス感染者数は20分の1以下なんだろうと疑問に思い、いろいろ調べた結果、BCG接種の有無と感染者数のデータについて興味深いことが分かった…「接種を継続しているイラクに比べて1984年に接種をやめた隣国イランは60倍が感染。81年にやめたスペインは、接種を続けているポルトガルの13倍。さらにドイツでは、接種を継続していた旧東ドイツと98年まででやめた旧西ドイツでは感染者の発生地点がかつての国境できれいに分断される…オランダでは新型コロナウイルスを抑制する可能性があるとみて医療従事者へのBCG接種をスタートさせたほかオーストラリアは臨床試験を始め、米国、ドイツも検証を始める予定という。」(「中日スポーツ / 東京中日スポーツ」2020年4月11日 15時28分)
その後、色々調べてみると2017年に東京からブリスベンに移住してビジネス/投資/コンサルティングのインターネットチャネルを運営している佐藤潤という人のJsatoNotes というブログで提唱されている仮設だということがわかった。https://www.jsatonotes.com/2020/03/if-i-were-north-americaneuropeanaustral.html
とても原文に当たる能力はないので、興味のある方は、これを詳しく紹介している大隅典子東北大学教授の記事「【さらに追記しました】新型コロナウイルスとBCG」(大隅典子2020年04月02日 )https://blogos.com/article/446483/ を見ていただくとして、ここでは「ダイヤモンドオンライン」の「コロナにBCGは「有効」なのか?東北大・大隅教授が緊急解説」(2020.4.13 5:35)https://diamond.jp/articles/-/234432 によって、要点をかいつまんで紹介しよう。
「そもそも、普通の風邪にせよ、季節性のインフルエンザの場合にせよ、周りで感染症が流行っていても発症しない人がいる。COVID-19の場合も、重症化する感染者は2割程度とみられ、特に高齢者や基礎疾患のある人のリスクが高いと思われた(最近では若い感染者も増加しつつある)。
従って、感染者数や死亡者数を国別で比較した場合には、人口構成比で高齢化率の高い国の方がCOVID-19に対して脆弱になることは容易に想像できる。そして日本は代表的な超高齢化国だ。
ただ日本では、挨拶のときの接触が少なく、風邪をひいたときや花粉症の予防などを目的としてマスク着用が一般的である。このような生活習慣などに加え、それぞれの国の医療制度やその充実度などの要因も、国による死亡率推移の差としてあるだろう。
また生物学的な要因としては、いわゆる“人種”の差を生み出すゲノム情報の差異が考えられる。移民の問題も加味されると状況はさらに複雑だ。…
WHOのデータによれば、結核が撲滅された欧米諸国では人口10万人あたりの結核感染者数は25人未満だ。…これに対し、中国や韓国では25人以上、100人未満。…日本はどうかというと、戦前の死因の第1位は結核だった。…だが現在では人口10万人あたりの結核感染者数は25人未満。にもかかわらず、COVID-19の死者数の割合は非常に少ない…
BCGとは、結核予防のためのワクチンで、結核菌を弱毒化したものだ。日本では、かつてはツベルクリン反応(ツ反)検査で陰性の(つまり、まだ結核菌に感染していないと考えられる)人にのみ接種されていたが、現在は生後1歳未満の赤ちゃんを対象に接種が義務付けられている。あの「9本針のスタンプ注射」の接種率は98%に上る。…欧州諸国はほとんどの国でBCG接種のプログラムがない。ドイツと国境を接するポーランドではBCG接種が為されているが、図2〔世界の主要国の人口100万人当たりの死者数の推移 出所:札幌医科大学フロンティア医学研究所〕のカーブの傾きはポーランドでは他の欧州諸国より立ち上がりが若干緩いように見える。」
幼児期のBCG接種の結核以外の効果として、幼児の呼吸器感染症による死亡率の減少、成人期以降の肺がんの発生リスクを下げる、膀胱がんの進行を抑えるなどがあるという。
「細菌やウイルスが体内に侵入した場合に、生体はそれを排除する仕組みを備えている。…
まず、「獲得免疫」とは、血液の中を循環しているT細胞やB細胞といった免疫系の精鋭部隊の細胞たちが、病原体が侵入したことを“記憶”。次回の進入時には、記憶したターゲットを狙い撃ちする「抗体」を素早く産生することによって病原体を排除する…ただし、このシステムが病原体ではなく花粉に対して過剰に働くと、花粉症のようなアレルギー反応を引き起こしてしまう。
一方、生体には“あらかじめ備わっている”免疫システムもある。外来の病原体が侵入すると、マクロファージやナチュラルキラー(NK)細胞といった免疫系の別の細胞たちが働き、ただちに「炎症性サイトカイン」と呼ばれる物質を分泌して対応する。
BCG接種は、どうもこの「自然免疫」を刺激するらしいことが分かってきた。2012年にオランダのグループが行った研究では、BCGワクチンは、インターフェロンγの産生を促すだけでなく、ヒトの免疫系細胞の1種である「単球」(マクロファージや樹状細胞に分化する細胞)を活性化し、種々のサイトカインを分泌させることがわかった。
この研究グループは、BCGのこのような効果を「訓練免疫(trained immunity)」という新たな概念として提唱している。つまり、自然免疫が働きやすくなるように“訓練された”状態になるというのだ。
さらに彼らは、BCG接種を受けた健常人血液に含まれる単球の“遺伝子スイッチ”の状態(専門用語では「エピゲノム」の状態)を全ゲノムレベルで調査。一回のBCG接種でサイトカインや様々な増殖因子を分泌しやすくなる方向に、スイッチの状態が変わっていることを18年に報告した。
つまり、「訓練免疫」とは、いわば「自然免疫」がパワーアップした状態と考えられる。BCG接種により、未知の病原体に対する抵抗力が高まる可能性があるのだ。…
このような背景から、BCG接種プログラムを持たないドイツ、オランダ、オーストラリアでは、医療従事者の新型コロナウイルス感染・重症化予防のためにBCG接種を行う臨床研究を開始した。
この情報はワイドショーでも取り上げられたために、成人に対して誤って皮下注射され、発熱やじんましん、血尿などの健康被害が届いたと聞くが、これは絶対禁止である。BCGは子どもの数に合わせて生産されており、必要な子どもに接種できなくなっては元も子もない。前述のように、日本の事情は欧州諸国とまったく事情が異なることは注意したい。…」
03~04年にかけて、老人の肺炎予防を目的に、東北大学の老年内科のグループによってBCG接種の効果についての臨床研究が実施され、肺炎発症の予防効果のあることが明らかにされた。ただし、この場合の肺炎の原因は新型コロナウイルスではないので、BCG接種が実際にCOVID-19感染症予防に有効かどうかは、欧州のBCG接種の結果を待たなければならない。もし欧州でBCG接種の効果が確かめられれば、今後、BCG接種プログラムを持たない国において、COVID-19感染症予防のために大人に対してBCG接種を行うという可能性はあるだろう。
ベトナムでは「医師ら800人、新型コロナ予防目的のBCG接種実験に参加」のニュースが伝えられている(ベトナム総合情報サイトVIETJO 2020/04/22 14:53 JST配信)。https://www.viet-jo.com/news/social/200421155614.html
日本では現在、BCGの接種率は98%となっているため、COVID-19感染症予防の原則は、物理的隔離と化学的除去となる。前者は、いわゆる「3密」を避けることの徹底であり、後者は界面活性剤やアルコールを用いた手洗いや手指衛生である。マスクの効果については、厳密な科学的エビデンスは少ないが、無症状の感染者が呼気等に含まれるエアロゾルを介してウイルスを撒き散らすことを防いだり、ウイルスに触ってしまった手指で鼻や口を触ることを避ける効果はあるだろう。また、基本的な健康維持のために提唱される快眠・快食、適度な運動は自然免疫を保つ上で極めて重要である。
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