風信 沼のほとりから 第61号 令和七年 弥生クレマチス3月26日読了時間: 1分今回の美智子上皇后とエマニュエル・トッドの紹介は、喧騒とうわついた世界の混乱に翻弄される日常と距離をおき、身近なものに目を向け、時の経過のなかで、自己を見つめなおすヒントをいただきました。春硯さんの最後の句は公私にわたってながく接してきた身として感銘深い句でした。
今回の美智子上皇后とエマニュエル・トッドの紹介は、喧騒とうわついた世界の混乱に翻弄される日常と距離をおき、身近なものに目を向け、時の経過のなかで、自己を見つめなおすヒントをいただきました。春硯さんの最後の句は公私にわたってながく接してきた身として感銘深い句でした。
※シリウスや送電塔の空の果て
今の季節、めぐるシリウス、めぐっているのは、地球の方。夜空を支配するが如きシリウス、一瞬の命はこちらの方で、永遠の前に僕らは小さい。小さいからこそ永遠を身近に知っているような気がしてきます。
※御仏の切れ長の目や逝きませる
これもまた見送る方が見送られる不思議な感じ。納得の平安は見送られる人の置土産、お返しは要らない、ただ、ありがとう。
※そよ風に梅の香匂う野道かな
そよ風を起こしているのは生きて在る生を寿ぐ梅の気配か
※寝姿を涅槃の如く炬燵かな
見えている日常がふと別の世界に見える。自分は今どこにいるのか迷っているのではなく、探っていることにふと気がつく。
※わが娘には故郷なりけり沼の春
分身なれど、心は別。面白いですね。ふと気がついた当たり前が新鮮です。
※一眼で世を眺め来て卒寿春
たどり着いたぞ、、たどり着いたのですね、若々しいときめき。卒寿とは、よくも言ったり、、白寿が射程距離です、俳句に感謝、春硯さんの新たな句境に遊ばせていただきました。ありがとうございます♪次号また、どんな俳句に出会えるのだろう、期待が膨らみます。
美智子上皇后が皇太子妃・皇后であられた時代は、今思うと、その歌集に象徴されるように「和」の文化が尊ばれ文学の才能が嘉された時代でした。今の雅子皇后は全く異なる時代に生まれ全く異なる才能に恵まれているのですが、いかんせん皇室や宮内庁がその時代と天分に付いていけない。いや、そんなものに付いていったら天皇制が滅びる、とでも怖れているがごとく。
上皇后さまの昔の歌で私がよく覚えているのは
・かの時にわがとらざりし分去(わかされ)の片への道はいずこ行きけむ
という一首です。
今から12年ほども前のこと、昔の同僚がかの大国の大使夫人として何年間か日本を離れることになりました。そのお別れにかつての親しい仲間6、7人で食事会をするのだが「あなたにドイツから戻ってもらうわけにもいかないので、メッセージを送って下さい」とその会の幹事さんからメールが来て、返事にこの「・・・片への道はいずこ行きけむ」の歌を引用したことを思い出します。
この女性は非常に優秀で非のうちどころがなく、外交官のご主人など(などという言い方は失礼ですが)いなくても自分の道を立派に切り開いて行く力を持っていましたが、結婚を申し込まれた時何の迷いもなくあっさりと承諾してしまったそうです。後日「あの頃は本当に若かったと思うわ、後先も考えず結婚してしまって。別の道もあったはずなんだけど・・・」と感慨深げに語っていました。もちろん後悔などしている訳はなく、今も満ち足りた幸せな日々を送っているようですが、彼女へのメッセージにも書いたように、多くの女性にとって結婚は大きなターニングポイント、どの道をとるかとらないかで、その後の一生が決まってしまいます。
貴賤を問わず(今ではこんな言葉も時代遅れながら)、多くの女性が「あのとき、もしこの人と結婚していなかったら、私は今」という思いに駆られることはあるはずです。
最近亡くなった曽野綾子氏が雅子さまに「運命をお楽しみください」という言葉を送ったそうですが、楽しむにはあまりに険しい道だったことでしょう。自分の身にかこつけても思うのは、楽しむとか何とかいうより、ただ一旦決めたものは受け容れるほかない、という現実です。
春分の日を過ぎてこちらも日ごとに陽射しが力強くなっていきます。近辺には今連翹が満開で、それに先駆けてまず山茱萸が咲きました。この花は英語でcornelian cherry, ドイツ語も同じ(Kornelkirsche)。「コーネリアの桜」という意味ですが、そのコーネリアはかの「コーネリアの宝石」で有名なコーネリアのことでしょうか。どなたかご存じであれば教えて下さい。
この四半世紀ほどで欧州の気候にも確かに「変動」はあって、ここしばらくは昔なら暖冬と評される程度の寒さなのはエネルギー費高騰の問題に悩む市民にはある意味有難いのですが、結婚して初めての冬の極寒と豪雪には、まさに「たまげて」しまいました。真っ白な巨大な羽毛のような針葉樹と綿布団を広げたような中庭を窓から眺めた時の驚き。
・雪の郷 男の夢に関わりて
そんなものに関わり合ったばかりに、今も動きが取れずにいます。