風信 沼のほとりから 第57号 令和六年霜月
- クレマチス
- 2024年11月28日
- 読了時間: 1分
「・・・その後お変わりありませんか。私は卒寿を越してさすがに足が衰え電動アシスト自転車で辛うじて外出しています。オープンカレッジで源氏物語を二十年ほど受講してきましたがすでに第一部の主人公光源氏は世を去り第二部の薫、匂宮たちの宇治十帖へとさしかかったところですが、 はたして全巻終えるまで私の足、いや寿命が保つものやら案じられる次第です。」「・・・風邪は油断できません。どうか御自愛専一に。私ならアールグレイ紅茶にブランデーを垂らして飲み温かいベッドで寝るところですが、大兄もくれぐれも無理せずお大事に。大村・びすこペアの息の合った掛け合いが再開。大朗報です。」

ドイツに戻ってもうすぐ1か月、何もしていないのに、連日何だかせわしなくて、まだそれくらいしか経っていないのかという感想です。
実は9月下旬に帰国する少し前から弊社の経営が大変苦しくなっておりまして、私は後ろ髪引かれる思いで日本に戻りましたが、現在は何とか小康状態を保っております。
明日はベルリンの国会で現政権の信任が問われることになっており、多分不信任で国会解散となります。とっくの昔に末期症状に陥っていたにもかかわらず、ドイツでは国会解散・内閣改造が憲法によって非常にむずかしくなっておりまして(なんでもナチの第三帝国時代の経験を理由にする)、日本やフランスのようなわけには行かず、「戦後最悪の政府」と呼ばれつつ今までしぶとく権力にしがみついてきたものの、もはや限界。
不信任に伴う解散のあと国政選挙は多分来年2月のどこかでしょう。これでドイツの産業界も少しは息をつけるかもしれませんが、ぼろぼろになった業界が一朝一夕に改善するわけがないので(フォルクスワーゲンの倒産危機、テュッセン・クルップの1万人解雇、日本のデンソーに当たるボッシュの一部身売り・・・)、まあ、来年いっぱい苦しい日々が続くものと覚悟しています。
さて後ろ髪引かれつつ戻った日本ですが、戻ってしまえばこちらのもの、途中であばら骨を折ったり、その前の残暑に倒れそうになったり、いろいろ問題はありましたが、庭の草むしりに駆けつけてくれたシルバー人材センターの高齢者の皆さん(私とあまり変わらない年齢)や、隈研吾の建築物で知られる梼原町の親切な住民、風呂好き・海水浴好きの孫たち(正確には妹の孫)を連れて駆け回った県東部、etc・・・結構外出が多くて、知らぬ間にあばら骨もくっついていました。この骨折のお陰で初めて市内の総合病院の世話になり、少しだけ最晩年のリハーサルをさせてもらえたのは不幸中の幸い。医師のリストに幼馴染みの友の息子さんの名前があったり、年とると地縁はありがたいものです。
さて、今月(いや、先月ですね)の名句の中の
「行く秋や遺影ばかりの写真貼」
私の日本のミニ書斎に亡き父母と妹の写真を立ててあって遺影ばかりでは悲しいので、孫たちの写真をコラージュのようにして飾りました。
これは我が家のことではありませんが、訪問先での感想。
・短日や鴨居に増ゆる遺影かな びすこ
写真は高知県西部の梼原町の「雲の上の図書館」、隈研吾の設計です。冬には数センチの積雪があるそうで、景色は南ドイツとスイスを思わせるものでした。
※秋寂びや訃報相次ぐ昭和の死 明治は遠くなりにけりという言葉を聞いたのはもちろん若い時ですが…昭和も少しずつ遠ざかって影が薄くなっていくなぁとの予感、その予感を春硯さんにこのように詠まれてみると、僕はちょっとどきっとしますし…クレマチスさんやびすこさんはどうお感じになるのか確かめたい気になってしまいます、、昭和の死、刻み込まれた墓銘碑にたじろぎます ※松葉蟹贈り来し加賀雪ならむ 本来移動するためのその長い脚が真っ赤に見栄えよく茹でられて、、そりゃあ春硯さん、、僕でさえ来し方の雪が思い浮かびますよ、、鮮やかな赤と身が引き締まる雪の白…春硯さんずるい…ハハハ ※行く秋や遺影ばかりの写真帖 アルバムのページをそろそろと繰ってゆけば、懐かしくも見慣れたはずの風景の中に時間を止めたままの別世界の人がそこにいる不思議、しばし繰る手が止まる ※コスモスや遠くの丘に白い雲 遠くに見える丘の上の白い雲とまるで呼応しあっているような息ぴったりの頼りなげに揺れるコスモスのクローズアップ、ほっとします ※実千両色づきそめて庭日和 つやつやした赤い実が新年が近いことを教えてくれる…赤い小さなアクセントが庭を落ち着かせる、さながら千両役者? ※魞杭や波間に朽ちて沼の秋 えりぐい、、魚を取るための仕掛けなんですね、、その仕掛けが自分の役目も忘れて水漬き朽ちてゆく、その静けさが沼の秋 ちょっと生意気にもこのところ忙しくしていたのですが…おかげさまで気持ちに余裕が生まれました…ありがとうございました❣️