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執筆者の写真クレマチス

風信 沼のほとりから 第45号 霜月

待望の春硯さんの風信と句帖です。オープンAIを扱った若々しい最新の話題とともに、いつもと変わらぬ手賀沼周辺の季節の風物と身辺多事のご自身の痛切な消息を深い思いで詠み込まれた句帖です。安積山は春硯さんの故郷福島県の猪苗代湖の東にある山で、万葉集や大和物語で歌われる「安積山影さえ見ゆる山の井の浅き心をわが思はなくに」の橘諸兄と采女の伝説で有名。これを踏まえたご兄弟への挽歌になっています。秋の季語の秋海棠(ベゴニアの一種)の異名を断腸花ということを初めて知りました。「沖の島・・・」の句はクレマチスが同行した湯河原囲碁合宿の折、快晴の相模湾に伊豆大島が望見されたときの句と想像されます。


閲覧数:48回5件のコメント

5 Comments


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Nov 30, 2023

10年ほど前に俳句らしきものを作ることに興味を覚え、以来、今世紀初頭からの先達の句(正確に言えば19世紀末の子規の句なども)を少しずつ読み始めた私が一人で面白がっているのは、そこに見る季語や風物詩のおかげで、それまで実見して知ってはいたけれど何と呼ぶのか分からなかったものに名前が得られたことでした。


もちろん、数百数千の俳句のみでなくインターネットで入手可能な多岐にわたる分野の情報のおかげで、例えば、日欧で用いられる緑肥というものに関心を持ったことから、刈敷という語に出会いました。辞書によれば「刈敷(かりしき/かしき)とは山野や畔などに生える草木の茎や葉を刈ってそのまま田畑に敷きこんで地中において腐らせることで堆肥とする方法もしくはそれに使われた草木のこと」とありますが、私は梅雨の時期のこの作業を見ているので、田圃に敷き込まれるのは多くレンゲ草であること、こちらドイツなら菜の花も畑の肥料に含まれることを知っています。またこの敷き込みの作業にはかつては専ら牛馬が使われていました。


ただ、その農作業が「刈敷」と呼ばれることは知りませんでした。自身が農作業をしたことはないし、生家で農耕が話題になることもあまりなかったので。けれども傍観者としてそれなりの関心は持っていましたから、言葉を聞いて、あ、それはあのことだ!とすぐ分かったのでした。


今回の春硯さんの句で拝見した「穭穂」という言葉も、ああ、あれはそう呼ぶのか、と知って何だか嬉しく、また言葉の美しさも心に刻まれました。我が故郷では収穫は早いので10月初めには稲は野面から姿を消しますが、そのあとに緑色の稲の「ひこばえ」(この言葉は知っていました)が出て来て田圃がまた少し賑わいます。


その景色から出現した句。

・虫老ひてなを穭穂を渡りゆく


この虫はもちろんバッタです。夏の間あれほど元気だったバッタやカマキリも、秋の深まりとともに老いてゆく。穭穂の葉に留まるのもあとほんのしばらく。


「刈敷」については、この言葉を知った途端、子供の頃に見た光景が浮かんで


・村雨が刈敷の牛を洗ひけり


という句になりました。都会育ちの方にも分かるようネットで見つけた写真を添付します。


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Unknown member
Nov 30, 2023
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ニ句とも、時間の経過が一瞬の連続の物語りで新鮮 精妙にできたプラスチックのような昆虫🦗の脚で、穭穂、といっても昆虫にとっては自分の身の丈より大きい生命の息吹に触れつつ渡り歩くなんて、俳句は一瞬をとらえるだけでなく心の投影ですね、牛も雨の中に立ち尽くす、どちらも人間と同じ。

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Nov 29, 2023

サム・アルトマンの話はこちらでも各紙の紙面を賑わわせていました。最初私がドキッとしたのは、希代の詐欺師とされる仮想通貨取引所FTXの創業者で元CEO、サム・バンクマン-フリードのことがあったからで、天才でありながらサムという極ありふれた名前を持つ点は別としても、ともにユダヤ人であること、頑固なヴィ―ガンであることなどが、二人を関連付けさせたのでした。


最近のある雑誌の見出しにはJesus brauchte drei Tage zur Aufstehung, Altman vier(イエスは復活に3日を要した、アルトマンは4日だった)とあり、夫と「なるほど」と感心することしきり。


安積山は春硯さんの故郷福島県の猪苗代湖の東とのことですが、私はこの歌を全く存じませんでした。そもそも、万葉集で現在の東日本が歌枕となることは珍しいのではありませんか。防人歌などは別として。(ほんの印象ですから、間違っていればご訂正願います。)


ちょっとした偶然なのですが、ここ数日昭和初期の俳人について調べていて、圧倒的に西日本出身者が多いことに気がつきました。特に、九州と四国。これは一つには俳壇に長く君臨した虚子が松山の出身であったことに関係しているのでしょうか。もちろん、山梨県出身の飯田蛇笏などもいますが。


秋海裳という美しい呼び名を知ったのは、子供の頃初めてベゴニアに出会ってから2,30年も経っていたと思います。断腸花という呼び名は、これも初めて知りました。洋花とされる植物の中には雅な和名を持つ花があるのに(シクラメン=篝火草など)、今は知る人も少ないのが残念です。


こちらはもうすっかり冬景色で、霜月から雪と霙の月になってしまいました。例年のように、クリスマス前に雪がドカッと降って、そのあと聖夜はグリーン・クリスマスとなって、1月からまた雪、という流れになりそうです。


ただ、温暖化はそう悪いことばかりではなく(私は特に寒さが苦手だからでもありますが)、これも最近の新聞の科学欄には、欧州の冬の厳しさが柔らいだためもあり、渡り鳥が南に帰らずドイツやフランスでそのまま冬を越えることが増えたそうです。何年か前の9月にコウノトリの様子を見て「鸛アラブの秋へ旅支度」という句を作ったことがあります。地中海地方の南欧や北アフリカで冬を越すとのことで、当時ちょうど「アラブの春」という言葉が流行っていましたので。


新聞記事を見て、特に老いた鳥が長旅から解放されているのは喜ばしい現象だと思い、「老いぬれば今は留鳥鸛」という句になりました。


「老い」で思い出しましたが、最近のわが珍句。「老いらく」となるとすぐ「恋」と続くのにちょっと反抗して、こんな句を。

・老いらくの背信もあり神楽月

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Unknown member
Nov 29, 2023
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仮想通貨…名前だけは聞いたことがあり始めた人は歴史に名を残す権利があると思います。 資本主義もそれを支える金融制度ももう古いと誰かが言ってくれないかなぁと思っていました。 ひらりひらりとあちらこちらにコメントを残してくださるびすこさんの情報貴重です…ありがとうございます😊 俳句も楽しみです♪

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Unknown member
Nov 28, 2023

※若き母みどり児抱いて文化祭 まだ学生気分が抜けない若いお母さん、、我が子を胸に楽しみも2倍…素敵なスナップ写真ですね ※沼の果て上総あたりに秋の雲 あー、みはるかす果てのあの雲は上総の雲だなと見当をつける気分の広がりが心地よく伝わって参りました ※沖の島霞む浦辺の秋の宿 見当をつけておいた島影を追うのはよく休んだ翌朝の宿から見るほっとする絶景ですね、余人見逃す絶景を独り占め、心を遊ばせていらっしゃる春硯さんが見えました ※安積山雪降る前の別れかな また来るからね、、目に残る光景はいつも新しい懐かしさ…なのかなぁと勝手に想像いたしました ※断腸花地球の裏へ行き別れ へー、秋海棠って可愛らしい花だったんですね、、幼い弟御さんの面影ときっとダブったのだろうなとこれまた想像をたくましくしました。 ※満目の穭穂生える谷津の朝 刈り取ってしまった後にも、どっこい、地中に残っている植物の生命の勢いを感じ、新しい命の空気まで伝わって参ります 今回も朝のひととき楽しませていただきましたありがとうございます😌

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