「暑さをものともせず探求者として美のホットスポットを巡歴する大兄には敬服するばかりです。それにひきかえ私は炎帝の暴虐に怖れをなし老懶無為の日を重ねるばかりでした。その夏も過ぎようとしています。…今日からはオープンカレッジの源氏講義が新学期です。松戸にある高層の会場の窓からは江戸川を距てて兄の葛飾区が眼下に望めます。…」(メールから)
今月も歴史を形作ってきた巨星が次々と姿を消して時代の変化を思い知らされていますが、そんな感慨を同時代の先達として春硯さんが風信と句帖で巧みに表現してくださいました。マロリーとエベレストの呼称についてはウィキペディアの解説がくわしいです。https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%83%A7%E3%83%BC%E3%82%B8%E3%83%BB%E3%83%9E%E3%83%AD%E3%83%AA%E3%83%BC
瑠璃色の朝顔は日本の民家に咲いているのをよく見かけますが、これは相当生命力が強いらしく初冬まで勢いがあります。少なくともわが郷里では。こちらではほとんど見かけないので、亜熱帯的な気候でないと繁茂しないのかもしれません。瑠璃色、麗しい色なのに、あまりに一般的なせいか注目されないのを残念に思っていました。確かに白い器はそのその美を際立たせてくれますね。
・朝顔や濁り初めたる市の空
これは杉田久女が軍港のあった産業都市小倉でものした句ですが、この俗悪ともいえる物質主義の町に馴染めなかった久女の胸中が察せられます。
朝顔とともに元気なのが昼顔。その生命力には驚嘆させられます。
・廃屋にからむ昼顔とにかくも生きる力は天が与えし びすこ
へっぽこ短歌のあとのお口直しにもう一度久女に登場してもらいましょう。
・夕顔やひらきかかりて襞深く
個性の強かった久女を悪しざまに評した人々も、この句には無条件の称賛をおくっています。
虫の音に不眠をかこつ帰省かな
故郷が東京という僕にとっては一瞬にしてタイムスリップできる状況がおうらやましい
失せ人の緊急放送秋の空
人が亡くなったと聞けば自分自身と二重写しになる年頃に僕もなりました
泥の中白骨眠る蓮田かな
大地に思いを寄せれば累々と生類の歴史が思い起こされます、心にストンと馴染むとともに代々の御霊に背筋がすっと伸びる心地する句です
露の朝河原に立てば遠筑波
河原全体の露の気配を静かに呼吸すれば遠くに見ゆる筑波まで渾然一体となった気分を味わえました清々しい句です
断捨離に二の足を踏む古ギター
あはは、、これは迷いますでしょう……迷う!爪弾いた若い指先の感触、それを傍で聞いていたかた、古びないですものね、たっぷり迷ってくださいませ😅
朝顔の瑠璃ひときわに白磁壺
人を払うような白磁の壺の冷たさに朝顔ですか…何たる遭遇、緊張を孕んだ美しい句です
素敵な俳句の数々恐れ入りました、ありがとうございました