20200504
4月3日に初めてコロナリテラシーを書いてから1月経った。今読み返してみて、若干の事実認識の修正とその後の進展による新事実の補足を必要とするが、基本的な新型コロナウイルス感染症についての知見に間違いはなかったと思う。
最近の新知見としては、新型コロナウイルスには武漢株と欧州株があり(北米株というのもあるらしい)、日本では第1波の武漢株はほぼ克服し集団免疫を獲得したらしいこと、4月になってピークアウトし、これから終息に向かおうとしているのはその後帰国者などから流入したと思われる欧州株によるらしいということである。早々に新型コロナを抑え込んだ北海道が第2波で感染者数を拡大させているのはインバウンドが持ち込んだ欧州株によるらしい。
最初のコロラリテラシーでもっぱら依拠したアビガンを開発した白木公康教授の論文には、L型とS型という2つの型のあることが記されている。「新型コロナウイルスの103株の遺伝子を比較した結果,2万8144番目の塩基の違いによってアミノ酸をセリン(S型)とロイシン(L型)に分けると,L型は中国・武漢で,1月7日以前の分離株の約96%であった。S型は武漢以外で,1月7日以降の分離株では約38%を占めていた。そのことから,L型はS型よりaggressiveと報告されている。両者は,約1万個の特定部位のアミノ酸の1つの違いなので,免疫学的に違うウイルスではなく,2回かかるとは思われないが,ウイルスの病原性や広がりの研究には重要と思われる。」ここでいうS型が武漢株でL型が欧州株に相当するかどうかはわからない。私が知らないだけかもしれないし、塩基配列を分析すればすぐわかることかもしれないが、この点は専門家の解明を期待したい。
さて、世界はパンデミックのプロセスを確実に経過して前のめりに終息を宣言した国も現れている。ヨーロッパもアメリカもすでにアフターコロナモードに入っている。日本国内は予想されたこととはいえ、政府のピンボケ対応は一向に改善されず、たてつけの悪い「新型インフルエンザ等対策特別措置法」(新型コロナウイルスを対象に追加)を挟んで、自治体と権限と責任の擦り合いに終始し、納税者、国民は相変わらず置いてけぼりだ。
緊急事態宣言の1月延長など、日本語として理解不能のイベントを再度鳴り物入りで発動して国民の行動規制を延長して得体の知れない新型コロナを封じ込めようという戦略だ。2か月も続くものを緊急とはいわないし、宣言に期間があるのも妙だ。ケチをつけだすとキリがないが、一国のリーダーがまた長々と空疎な言葉を並べて、補償の裏付けのない自粛を従順な国民と納税者に要請(強要)する儀式だろう。
「人の動きをとめて経済を失速させれば、コロナで死ぬ前に経済で死ななくてもよい人が死ぬ。」と書いたが、5/3の東京新聞が社会面で詳しく報じているように、練馬のとんかつ店主が焼身自殺したのは胸を突かれるニュースだった。世界が前のめりで終息させようとしているのは、2次、3次の流行が予想されている感染症のパターンを前提としても、コロナを克服する前に、経済が破綻してしまうという二者択一を迫られて経済を優先させたものだろう。
日本が今どの段階にあるかを冷静に判断し、適切に政策を決定するためには、感染者数、陽性率、新型コロナによる死亡者数、実効再生産数、などのデータを正確に把握する必要がある。「8割おじさん」西浦博・北海道大教授らの専門家の献身的な努力には敬意を表するが、医療資源の保全を前提にPCR検査の実施件数をあらかじめ絞り込んで、国立感染症研究所に権限を集中させるような検査体制で作られたデータは客観的なものとは言えない。5/1の専門家会議の資料では実効再生産数は4/10時点で、全国0.7、東京0.5とされている。面倒な計算が必要らしいが、1をはるかに下回っているので、諸外国ではとうに緊急事態解除の数字だが、管理された数字の積み上げから算出されたものだから、解除の判断はできないのだろう。
さすがにコロナリテラシー3でのべたようにドライブスルー方式や簡易キットでPCR検査や抗体検査を広げようという動きが出ている。中等症の患者を集中的に受け入れる「重点医療機関」を設定する神奈川モデルなど、新型コロナ患者の受け入れ体制も徐々に整備されてきた。
慶応大学病院でコロナ以外の外来患者(4/13~19)にPCR検査を実施したところ、67人中4人(6%)が陽性だった。また、「神戸市立医療センター中央市民病院(同市中央区)の研究チームは、4月7日までの8日間に外来を受診した患者千人の血液を検査したところ、新型コロナウイルスに…感染後しばらくしてできるIgG抗体が33人(約3%)から検出された」(5/2神戸新聞NEXT)。
これらのデータから、日本国内には既に相当な割合で新型コロナウイルスの感染者が市中に存在していることを想像させる。従ってコロナリテラシー3で指摘したように、むやみと手間のかかる感染経路の追跡とクラスターつぶしに人手を集中させるより、抗体検査や抗原検査を広く実施して集団免疫の形成程度を把握するデータの収集と、発症者の適切な治療体制の構築に人員を投入する方向にかじを切ったほうがよいのではないか。「帰国者・接触者相談センター」という仰々しい窓口から「帰国者・接触者外来」を通さないと治療を受けられないというのでは、必然的に新型コロナ患者はどこかで目詰まりを起こしたシステムの犠牲になるだろう。感染経路不明の感染者が至る所にいる前提で新型コロナ感染症の医療システムは構築するべきだ。
コロナリテラシー1で述べたようにPCR検査は熟練技師による手間のかかる検査である割には誤差もあり、判定を絶対視することはできないが、新型コロナウイルスを確定診断するには必要な検査だから、繰り返し述べているように、実施件数を増やすべきなのはいうまでもない。急性症状に苦しんで医師の診察により、PCR検査の必要を認めて保健所に回したにもかかわらず、要件を満たしていないなどの理由で門前払いを食って手遅れになったという事例が後を絶たない。
さて運よくPCR検査を受けて、陽性判定が出たとして、生還できる保証はない。上気道をスルーしていきなり肺胞の奥深くに到達したウィルスが無防備な粘膜から潜り込んでサイトカインストームを引き起こし、あっという間に重症化して手遅れになったというケースが間々ある。肺炎が進行していても自覚症状がないというのがこのウィルスの真に恐ろしいところだ。
アビガンのことは、第一回から開発者の論文を引用し、コロナリテラシー2でも詳しく紹介した。その後も著名人などが、アビガンのおかげで回復したという事例が次々と伝えられているが、誰でも適用されるものではない。
まだ一部に誤解があるが、アビガンは新型コロナウイルス感染症の治療薬としては、日本国内で治験を実施中で、6月には終了する予定だが、正式承認はまだ先だ。ただ、すでに新型インフルエンザ治療薬としては承認されており、政府により十分な備蓄がある。厚労省が認め、患者が望み、病院の倫理委員会が許可すれば観察研究という位置づけで投与可能となる。従ってこれらの条件を備えた病院に運よく入れた場合、副作用を考慮したうえでアビガンの投与により回復する可能性はある。
レムデシビルについては、「開発した米製薬大手のギリアド・サイエンシズは4月29日、重度の入院患者を対象としたレムデシビルの治験について予備結果を公表し、肯定的な結果がでたことを明らかにした。」(日本経済新聞5/1)。アメリカで治験が終了して認可されれば、日本での治験は省略して特例承認として認可する予定だという。この時期だから前倒しでというのはありかもしれないが、中国での治験では「効果はみられなかった」といういわくつきの薬剤だ。アビガンが錠剤で軽症者に有効なのに対し、エボラ出血熱用に開発されたエムデシビルは点滴用で重傷者に適している。新型コロナウイルス感染症に対する武器として必要性を感じているかもしれないが、急いで認可して日本には必要量回ってくるのだろうか。
緊急事態の延長は、専門家会議の分析を受けて、1カ月延長のアドバルーンをあげたものの、実体経済の落ち込みや犠牲者の悲鳴・反発で、実質的には緩和の方向をにじませたものになるようだとの観測情報が流れている。図書館や美術館が解禁になるのは今更だがうれしい、と書いたところで安倍首相の演説が始まり、案の定、金は出さぬが口は出すのプリンシプルを貫徹した中身のない延長方針が示された。月中に中仕切りを入れて、専門家会議に下駄を預けて場合によっては繰り上げ終息の可能性を挿入したあたりが、いくらか意外性があったが、月末まで引っ張るのはさすがに無理と見て予防線を張ったのだろう。「外出それ自体がいけないのではない」、「新生活様式」など今更1国のリーダーにテレビ演説で蒙を開かれるような内容ではない。まだ明るいが、阿保らしくて夕食を調達しに早めに出ることにした。祭日モードで夕方のクラシックの放送もないからさっさとルーチーンをこなそう。
新型コロナウイルスの発生について中国の責任を追及するアメリカの姿勢が鮮明になってきた。大統領選挙を意識して仮想敵国を提示して有権者の支持を集めようという常套手段だが、マスクを始め、医療器具、医薬品、などあらゆる生産物を戦略物資として動員するのがアメリカと覇権を争う中国の基本国家戦略だから、必然的に貿易戦争・情報戦争となり、アメリカも手段を総動員する。この件については5/1の文春オンラインの記事「ウイルスは武漢研究所から漏れ出した」“トランプの天敵”ワシントン・ポストも擁護した「幻の論文」が面白い。
しかし、金麦がいい具合に回ってきたし、話が長くなったので、次回に回そう。
おはようございます ありがとうございました朝から心の平安が得られました大新聞社の新聞記者連中にも読ませてあげたいですスッキリした気分でインスタント🍵緑茶おいしいです