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執筆者の写真クレマチス

コロナリテラシー2  アビガンなど

20200418


新型コロナウイルス感染症がなかなか沈静化せず、日本の医療現場は一部崩壊しはじめている。 鳴り物入りで引っ張るだけ引っ張って、自治体からせっつかれてようやく発動した緊急事態宣言。諸外国の同種のものとは似て非なる責任逃れの中途半端な宣言の後も政府の迷走は軌道修正されることなく、業を煮やした自治体がそれぞれの宣言を発して混乱をきわめた。

10万円の一時金給付は公明党の強硬な姿勢でようやく決着し、安倍首相は陳謝した。初めからわかりきったことを周辺の利害関係者の綱引きで決断できず、時間を空費した。ややこしい手続きで役所のお仕事を増やし、うんざりして申請を放棄する納税者がふるい落とされるように仕向けているとしか思われない。失政のつけは今回も、医療の先端でコロナの脅威と向き合う看護師や固定収入のないフリーターなどの社会的弱者に押し付けられる構造はゆるぎない。相変わらず、外出の自粛ばかりが強調され、一致団結して難局を乗り切ろうというような紋切り型の空疎な合言葉が繰り替えされている。

世界の流れに逆らって無理筋の消費増税を強行して消費不況を招き、経済の低迷をインバウンドとオリンピック頼みの1本足打法で切り抜けようという根本政策が間違っていたのだから、未曽有の国難にあって国民の生命を維持しようというときに、消費税を停止してしまえば余計なコストをかけずに納税者に公平に返すことができたはずだが、一度懐に入れた国民の血税は、財務省と政権に近い関連業界に少しでも厚く分配しようという邪な魂胆を、公平性などのオブラートで隠してあの手この手の面倒な手続きを構えて国民に愛想をつかされそうになっている。 事態はすでに世界が歴史的なパンデミック状況に置かれていることは間違いない。このことに目をそむけず、難敵新型コロナウイルスCOVID-19に立ち向かわなければならない。テレビやネットで様々な言説が飛び交っているが、相変わらず根拠に乏しいものも多い。 まず、前回のおさらいである。 新型コロナウイルスの感染は、飛沫感染、接触感染(物を介する感染)、エアロゾル感染による。 人と人との距離(ソーシャルディスタンス)を2メートルとするのは、大声でしゃべったり、くしゃみで飛散するウィルスが乾燥して感染性を失うまでの距離である。むき出しのコロナウィルスは落下して乾燥すると感染力を失う。 またドアノブなど物に付着した場合、3日程度も感染力があるという。ウィルスの表面は脂質の膜をまとっていてこれで人の気道の粘膜にとりつく。だから手洗いやエタノールなどでの消毒が有効だ。 そして恐ろしいのが、湿度を帯びた密閉空間でクラスターを多発させているエアロゾル感染だ。エアロゾルというのは微小な液体または固体の粒子と周囲の気体の混合体で空気中で浮遊できる粒子(日本エアロゾル学会HP)ということで、極めて複雑でまだよくわかっていないことがおおいようだ。

繰り返しになるが、もう一度前回引用した白木公康氏の「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のウイルス学的特徴と感染様式の考察」から、今度は解説図も含めて引用しよう。

「インフルエンザウイルスを含む多くのウイルスは乾燥して感染性を失う。したがって,コロナウイルスはインフルエンザ同様,エアロゾルが乾燥する距離である2m離れたら感染しないと思われる。しかし,湿気のある密室では空中に浮遊するエアロゾル中のウイルスは乾燥を免れるため,驚くことに,秒単位から1分ではなく,数分から30分程度,感染性を保持する。…注意すべき点は,湿気の高い密室では2m離れていても,くしゃみや咳だけでなく,呼気に含まれる1μm程度のエアロゾルさえ感染性を保持して浮遊し,吸気によって上気道または下気道で感染するということである。…部屋の加湿は気道には優しいが,呼気や咳・くしゃみにより生じたエアロゾル中のウイルスの乾燥を妨げ,感染性を保持しやすいことになるため,湿度を上げすぎないことに留意するべきである…」


アビガンは元々前回の新型インフルエンザ感染症の流行時に、富山医科薬科大学(当時)の白木公康氏と富山化学工業(当時、現在は富士フイルム傘下)が共同開発したもので、タミフルなどのインフルエンザ治療薬が効かなかったときでも有効に治療できる抗インフルエンザ薬として、2014年3月に承認されている。ただし、副作用として、血中尿酸増加、下痢、好中球数減少などがあり、動物実験で初期胚の致死および催奇形性が認められたことにより、妊婦または妊娠している可能性のある女性への投与が禁忌となった。 これも詳しくは日本医事新報の白木氏の続編「No.5005 緊急寄稿(2)COVID-19治療候補薬アビガンの特徴」に開発者としての立場から詳しく説明されている。 また、新型コロナウイルスのへの適用にかんしては、同誌の別の論文を引用しよう(No.5006 (2020年04月04日発行) P.58) https://www.jmedj.co.jp/journal/paper/detail.php?id=14325

「COVID-19流行は緊急事態─今こそ、ファビピラビル(アビガン®)の使用を解禁すべき」菅谷憲夫 「…ファビピラビルは富山化学が抗インフルエンザ薬として開発したRNAポリメラーゼ阻害薬である。鳥インフルエンザH7N9ウイルス出現により、その重要性が注目され、2014年3月に日本で製造販売承認を取得したが、動物実験で催奇形性という重大な副作用があり、季節性インフルエンザでの使用はできず、新型インフルエンザが流行し、他の抗ウイルス薬が無効と国が判断した場合に、製造が許可され使用できることになっている。 H7N9ウイルスは死亡率が高く、パンデミックを起こす可能性の高いインフルエンザと考えられていた。オセルタミビル(タミフル®)で治療すると、容易に耐性ウイルスが出現し、強毒化することが問題であったが、ファビピラビルはオセルタミビル耐性ウイルスにも有効で、ファビピラビル自体に対する耐性の発生がほとんどないことが大きな利点であった。… ファビピラビルは、インフルエンザに使用する場合は、添付文書に、①動物実験において、本剤は初期胚の致死および催奇形性が確認されていることから、妊婦または妊娠している可能性のある婦人には投与しないこと。②妊娠する可能性のある婦人に投与する場合は、投与開始前に妊娠検査を行い、陰性を確認した上で投与を開始すること。③本剤は精液中へ移行することから、男性患者に投与する際は、その危険性について十分に説明した上で、投与期間中および投与終了後7日間、性交渉を行う場合はきわめて有効な避妊法の実施を徹底(男性は必ずコンドームを着用)するよう指導すること。また、この期間中は妊婦との性交渉を行わせないこと等、妊婦での使用禁止と、男性でも性交渉での厳しい注意が記載されている(http://fftc.fujifilm.co.jp/med/abigan/pack/pdf/abigan_package_01.pdf)。 ファビピラビルは、副作用が強いから使用すべきではないと一般に考えられているが、催奇形性を除けば重大な副作用はない。慎重投与として、痛風または痛風の既往歴のある患者および高尿酸血症のある患者では、血中尿酸値が上昇し、症状悪化のおそれはある。 アビガンは比較的に大きな錠剤で、1錠中に200mgのファビピラビルが含まれている。インフルエンザ感染症では、成人にはファビピラビルとして1日目は1回1600mgを1日2回、2日目から5日目は1回600mgを1日2回経口投与する。大きな錠剤を1日目は、1回8錠で1日2回、計16錠飲むことになり、高齢者には負担が大きい。 世界では、COVID-19のPCR検査を広く実施することが感染制圧の第一歩であることがコンセンサスであるが、政府の専門家会議も含めて、日本のみ検査の重要性を無視しているのは残念である。検査が広く実施されないために、多くの家族内感染や院内感染が生じ、死亡者も出ている。PCR検査を、少しでも疑いのある入院患者に実施しなければ、院内感染を防ぐことはできるわけがない。 COVID-19流行は日本の緊急事態であり、現状のままPCR検査も実施せずに、抗ウイルス薬治療もしないままであれば、いわゆる医療崩壊が起きて、多くの日本国民が死亡する危機が迫っている。高齢者やハイリスク患者では、ファビピラビルによる治療を早急に解禁すべきである。なぜなら、日本には200万人分のインフルエンザ治療薬が備蓄されているからである。催奇形性の副作用も高齢者であれば問題ない。ファビピラビルはインフルエンザでは有効性が確立しているが、COVID-19では、有効性は確立していない。しかし緊急事態であり、治験の結果を待つことで死亡者を出してはならない。広くファビピラビル治療を実施しながら、有効性、安全性を確認する体制づくりが必要である。 さらに、COVID-19では高い院内感染率が報告され、医療従事者が重症化して死亡することもあり、医療従事者は重要なハイリスク群である。医療従事者のファビピラビルなど抗ウイルス薬による早期治療はCOVID-19対策として重要である。」 引用が長くなったが、ワクチン開発は早くて年末と言われている現状で、アビガンの重要性は共通の関心事でもあり、正しく認識する必要があると考えた。他の治療薬候補としては、エボラ出血熱の治療薬としてアメリカの医薬大手ギリアド・サイエンシズが開発した核酸アナログ製剤レムデシビルが臨床試験で有望な結果が出たというニュースが報じられている。トランプが、拡散しているが、まだ安全性や有効性についての結論は出されていないようだ。あと、急性膵炎の治療薬として国内で長年使われてきた点滴薬剤「ナファモスタット(商品名フサン)」が新型コロナウイルスの感染阻止の可能性があると、東京大医科学研究所が発表している。安全性については十分な臨床データが蓄積されており、人の細胞への感染を模擬した実験の成果で、国立国際医療研究センターなどと近く臨床研究を始める方針。

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