英国離脱でEU加盟国が減り、初めてEU縮小という現象が起きたが、それまでは「さらなるヨーロッパ」が標語だった。しかしEUが拡大すればするほど、仲間に入れない近隣国の疎外感が募るであろうことは等閑視された。かつてのトルコとか昨今のウクライナとか。EUの慢心は時に目に余るものがある。
そんな中で難民騒動を機に国籍・国境に異を唱える政治家や活動家が欧州で台頭し、人は皆コスモポリタンつまり世界市民たるべきと説く。ならば身分証明書の国籍欄には「世界人」と記入、性別は「LGBT」も考慮するとして、生誕地は「地球」、現住所も「地球」。
だが世界と書くのは世界以外の場所があることを暗示し、地球が現住所なら地球外の住人もいることになる。そもそも私たちの国が日本といえるのは日本でない国々があるからで、一神教の神すらその存在を示すために悪魔という反対物を必要とした、とはよく言われることだ。
などとつらつら考えていたら、全世界市民を脅かす敵が現れた。言わずと知れた新型コロナウイルスである。さあ、今や人類は国籍を忘れ地球住民として団結するか、と固唾を呑んで見守っていると......
何のことはない、国境のあちこちで、来るな、帰れ、の小競り合いが起き、何をエラそうに封鎖なんかしやがって、そんならうちも、とメンツ争い。はてはEUファースト、いやドイツファーストのワクチン奪い合いへと発展し、どうやらコスモポリタン構想は当面お預けらしい。
それにしても、日本の新聞・テレビはどうしてこうもヨーロッパを礼讃するのか。明治以来の舶来崇拝の延長だろうか。
ふらんすへ行きたしと思えどもふらんすはあまりに遠し、などという時代ではもはやないのに。
(写真はドイツとチェコの国境)
PS:上記のワクチン争奪戦について
これまでワクチン接種が実施された割合はEU平均で 2.7 %、これはドイツの場合も同じ。一方、英国では既に国民の 25 %が接種済み。この大差の原因は、ワクチン調達を一手に引き受けたEU委員会の大失態、としか言いようがない。
まずEU独特の官僚主義が迅速な手続きを阻んだ。そして医薬品会社との折衝が甘かった、というより、おそらく舐めてかかっていた。値段が高いのどうのといちゃもんをつけ(バザールじゃあるまいし)、口論が長引いている間に米国・英国・イスラエルが本来EUに渡るはずの分まで持って行ってしまった。
しかもこの失態は、6か月ごとに交代するEU議事会議長国がドイツの番だった昨年後半に起きた。委員会のトップであるフォンデアライエン女史とドイツ首相のメルケルという二人のドイツ人女性に責任の大半があることは明白である。
(弾劾されるフォンデアライエン、エコノミスト誌より)
私は見ていないが、日本のテレビで放映された番組でメルケルは「ドイツ政府は誰一人として見捨てることはしない」と大見得を切ったという。何人かの日本人から「立派ね」と褒められたが、言うだけなら誰にもできる。
数日前にドイツのウイルス学者(女性)が、接種がもたついた最初の数か月だけで 3万人の命が失われた、とネットで怒りをぶつけていた。今日もまた多くの命が消え続けている。日本人の死者 6千人台に対し、こちらは 10倍の 6万人台である。
わが夫も 80歳を越えたので優先されるはずだったが、アポを取るため何度電話しても繋がらず、20回目に漸く通じて尋ねると「ワクチンがありません」と言われた由。ああ、どうぞ、死なないでね。もう、祈るしかない。
ここしばらく、英国では「Thank God, we left!(良かった、EUと別れていて!)」が挨拶代わりだそうだ。
当時私は日本を離れていたのでよく分かりませんが、日本がこうものんびりしていた背景には、SARS‐Cov-1(でしたっけ)のワクチンを大量注文し、それが届く前にこの疫病が終息して何十億円分もの薬を投棄しなければならなかった、という経験から慎重になったのでしょうか。しかし様子を見ていれば、一向に終息に目途が立たないことは明らかだったのに、なぜ・・・?
今日の新聞によると、イスラエルでの一回目のワクチン接種率は国民の35%、二度目が21%だそうです。今国際的に極めて評判の悪いネタニヤフ首相、ワクチンの手配に関してはさすがに目端がきき、ごちゃごちゃ言うEUの倍を払う、と納入させたのだそうです。そのあたり、いっそう悪名高いトランプも同じやり方だったかもしれません。
「んまあ、カネにあかせて」と言うと、一回のロックダウンで国家が被る経済損失に比べればピーナッツみたいなものさ、とうちのドイツ人。ものごとの優先順位を取り違える人を世間はバカと呼ぶのですけどね。
オリンピックの話は、最初からこの森という男に嫌悪感があり、二階というやくざまがいのフィクサーに押されて菅氏が総理に決まったときは、1950年代の超泥臭い政治家集団が蘇ったような気持ちの悪さを感じました。当時の新聞には造船疑獄の報道などが出ていて、政治というものの闇が子ども心にずっしりとのしかかったものでした。(そういえば、安倍はその末裔。)
そもそもオリンピック自体に疑問を感じており、近年の欧州の動きを見ているとうぶで無邪気な日本が手玉に取られているような気がします。トーマス・バッハ会長の腐敗ぶりはこちらではつとに知られていますが、日本ではそんな話はタブーですね。オリンピック誘致に関してちょっと面白い話があったので、3月号にはそれを書きましょうか。
日本のマスコミでメルケルやEUの悪口をいうのは勇気がいるかもしれません。
日独の事情に通じたびすこさんならではの切れ味でした。
ワクチン戦争は他人事でなく、いまだオリンピックに未練たらたらの日本政府は、天に唾してオリンピック憲章を侮辱して火だるまになった組織委員会の長老が辞意を漏らしたにもかかわらず、取り巻きが東京オリンピックの頼みの綱と慰留する始末。司令塔不在で、経済は相変わらずオリンピックの一本足打法、その前提となるコロナの沈静化はワクチンだのみの一本足打法で難局を乗り切ろうとしていますが、たのみのファイザーのワクチンはベルギーで生産しているので、このEUの持ち出し禁止ルールに抵触してあれこれいちゃもんをつけられるのではないか心配。政府は国民の摂取に必要な数量は、ファイザー(米)とモデルナ(米)とアストラゼネカ(英)から確保したと繰り返し、アナウンスしているが、はっきりした入手時期は次々と先延ばしになっている。河野太郎担当大臣はワクチン争奪戦に敗戦濃厚と… (「河野太郎が思わず漏らした…ワクチン争奪戦「敗戦濃厚」で日本が世界から締め出される!」現代ビジネス 2/9(火) 7:01配信)
https://news.yahoo.co.jp/articles/535fbb9e82f755fb9a498a4ed31fe6e294a404d4
シカゴ学派、と聞けば、ミルトン・フリードマンやジョージ・スティグラ―に代表されるノーベル経済学受賞者が頭に浮かびますが、社会学でも知られ、また神学においても著名な学者を輩出していますね。でもこの大学がロックフェラーの寄付により創設されたことはあまり知られていないのではないでしょうか。
この点、すなわち多くの学問の府が富豪の財産に支えられてきたという事実が、欧州との大きな違いです。欧州は社会主義を重んじるあまり、私人の財産には懐疑の目を向け、どうかすると憎しみの対象になります。実際、税金も重いので多額の寄付をするほどの資金は手元に残りません。
ドイツの(おそらく他の欧州大陸の国々でも)大学は95%までが公立で、それらにはマーチン・ルター大学とかフンボルト大学とかヨハネス・グーテンベルク大学など人名がつけられていますが、それは大学のある州の出身者やゆかりの偉人で、私人の寄付でできた大学はありません。そしてどの大学もドングリの背比べです。
島嶼国の英国が、大陸の政治・文化やその思想にどうしても馴染めなかった理由も分かります。ケンブリッジやオックスフォードの名声は今も変わっていませんが、オックスフォードとほぼ同時期に設立されたパリ大学、12世紀から14世紀にかけて創設されたボロニア大学、プラハ大学(ドイツの大学として設立)など、いずれも栄光は過去のものです。
ヨーロッパ礼讃、、、隣の芝生は青く見える、アメリカよりもヨーロッパ…意外と根強いかも。あんだけ国境が接していてよくやってける、、、いざこざの百戦錬磨…大先輩、僕の頭の中にこんなイメージができているのが今わかりました。今取り寄せている…アメリカのシカゴ学派の社会学に関する本…連中も案外ヨーロッパから学んだのかな?なんて相変わらずとんちんかんな僕です。
英国人の免疫力を高めましたね、Thank God ,we left !