長々メールと長々ブログ―フルトヴェングラーなど
2021/12/04 土 01:48
C さま
先日はメールをありがとうございました。ここしばらくご自分のパソコンと格闘しておられるようでしたが、10 年選手のデスクトップですか。そういえば私のも 10 年余りのデスクトップですが、丈夫でよく働いてくれます。もっとも私は自由自在に使いこなせるわけではないので、ごく簡単な機能しか用いないせいもあるでしょう。
驚くのはHP製のプリンターで、こちらに来て 20 年間故障したことがありません。モノクロなのでカラーにしたらといわれますが、色付きの写真が欲しければ下の事務所に送って印刷してもらうのでこのシンプルな型で用は足ります。ヒューレットパッカードといってもどこの国で作っているのやら、でも性能は抜群。一昨年以来日本ではエプソンでしたが、それがもうしょっちゅう不具合で何度修理に出したか。問題は些細なことですが、それでも頻繁に起きる。私はアメリカ企業をすっかり見直しました。
といってもこれが初めてではなく、実はエアコンには、断れない知人に頼まれ Whirlpool を使っていて、これも 1977 年から 2002 年(結婚後私がアパートを引き払った年)まで 25 年問題なく動いていました。日本製は付加価値と称していろんな機能をつけたり、こんな楽しい使い方もありますよ、などというけど、そのおかげで使いにくかったりすぐ機嫌を損ねたりで、有難迷惑です。HPとWPは私、宣伝役を買って出てもいいくらい。
さて日本のコロナ感染者激減の謎。私は前から日本人の死者が少ないのは血管と血液がきれいなため、というド素人理論を主張しておりましたが、今朝ほどネットで日本人の体質に起因するのでは、という説が展開されていました。これも納得します。体質というのは実に曖昧な表現ながら、筆者は日本人が遺伝的に持つ酵素の特質を取り上げていました。
アジア人がアルコールに弱いのは酵素に原因があるというのは知られている通りで、牛乳や乳製品へのアレルギー、過敏さ(取りすぎると日本人の場合乳がん/前立腺がんになりやすいとか)もやはり遺伝子から来ているような気がします。こちらで売っている海藻類、海苔やわかめの袋には「甲状腺に異常をきたす可能性があるので少なめに」などと書いてあり、最初は、んまあ、聞いたことのない説だわ、と思いましたが、2 千年も島嶼国に住んで貴人ですら「玉藻刈りをす」で命を繋いできた民族と、牛・豚・羊を塩漬けにして年がら年中食べてきた人々とでは、おのずから「体質」は違うはず。グローバル化でこれも徐々に変化するとは思いますが、10 年や 100 年という単位では変わらないでしょう。
メールでフルトヴェングラーのことに言及しておられましたが、もう 15, 6 年前にこの人の記事に目を留めたのは、30 代で読んだ「音と言葉」という著書のためでした。ベートーヴェンやブルックナーなど当時の私にはさっぱり、という音楽家が取り上げられている一方で文明論的な所見には共感を覚えました。今読んだら理解度は以前より深いと思いますが、田舎の家で見つかるかどうか。
フルトヴェングラーとナチとの関係で連想するのは、ドイツ有数、ということは世界に名だたるソプラノ歌手のエリーザベート・シュヴァルツコプフです。こちらは明らかにナチと協力関係にあり、確か隊員になっていたと思います。戦後しばらくはそのことは表ざたにはなりませんでしたが、70 年代だったか 80 年代だったか、それがマスコミで取り上げられたとき、彼女はナチとの親密な関係を即座に否定しました。
マックレイキングの好きなジャーナリストが動かぬ証拠を突き付けて、初めて彼女はその事実を認めますが、大新聞は彼女とナチの関係そのものよりもそれを否定したこと、証拠を見せられて渋々認めたことは、彼女のそれまでの栄光のキャリアを汚すものだと非難しました。
それは当たっていますが、音楽に生涯をかけ、まっすぐに芸術の道を歩みたかったというこの女性の生き方に同情できなくもありません。彼女のドイツ的な美貌はヒトラーの好みでもあり、レニ・リーフェンシュタールの場合もそうですが、その美しさのためにナチから特別の厚遇を受けたことは容易に察せられます。
ただ、ユダヤ人やアンティファがどれほど彼女を憎もうと、彼女の歌の素晴らしさには変わりありません。フルトヴェングラーのことで彼女を思い出し、昨日はたっぷりと聴いてみました。私はオペラよりも彼女のリートが好き、特にシューベルトの「シルヴィアに」とか「至福 (Seligkeit)」。それからブラームスの「眠りの精」も。(眠れ、眠れ、眠れわが子、の部分だけドイツ語で歌える!)
良い気分になってきたところで、しょうもない三色連立の話をすると艶消しなので今回は止しますが、私は 2009 年に現在の立憲民主党(また名前を変えてませんよね)が政権をとった時のことを思い出します。
緑の党は素人集団と言ってもいいほど世間知らずだし、企業寄りの自由民主党が 11.5 %の得票率にもかかわらず財務大臣のポストを手にしたのも、もしこの党が外れると緑の党は与党になれず、社会民主党はキリスト教民主連合と組む以外に選択肢はなくなるから。
妥協と言えばこれほど妥協だらけのパッチワーク政権も珍しいでしょう。これで 4 年持てば大したものだと思っています。特に外務大臣のお手並みが楽しみです。
ブログは今回もちょっと長くて申し訳ありません。
びすこ
追伸:今日のニュースに、ナポレオンの将軍でロシアで倒れそこに葬られた人物の遺体が 2 年前に見つかったので、それをアンヴァリッド廃兵院 (親分のナポレオンの墓がある)に埋葬するという記事がありました。ナポレオンはフランスでは英雄かもしれないけど、客観的には欧州から地中海沿岸国を荒し回った悪漢で、植民地政策への賠償問題が出ている昨今、ナポレオン、ナポレオンと自慢し続けるフランスは実に無神経で傲慢だと思います。
もう一つ、27 歳で外務大臣となりその後順調に出世街道を歩んでオーストリア首相となったセバスティアン・クルツが、汚職の疑惑から首相に次いで党首の職も辞し、35 歳で政界引退を表明しました。彼のためにもよかったと思います。とにかく若すぎた(私の半分も生きていない)。ウィーン大学法学部に学籍を置いたままでの政界進出でした。今は学業を全うし、生まれた子の育児にもかかわり、一市民として世間を渡り、できればもう一度、今度は成熟した政治家としてカムバックしてほしい。
今年最後のブログ
2021/12/20 月 02:15
C さま
私も今年最後のブログです。実はこちらもパソコン画面がおかしくなりまして、突然真っ黒になったりします。パソコンが使えなくなる前にと、USB に保存して置いたのを今出してお送りしているところです。近日中に修理してもらいます。そうでないと年末休暇で来年までパソコン無しになりますので。
今回は取りあえずこれで。
B
PC の問題解決
2021/12/20 月 17:44
C さま
今朝がたマリオさんに、PCの画面がおかしいの、と言ったら、すぐ階下の社員をよんできて、アッという間に画面を変えてくれました。年末困らずに済みそうです。よかった、これでいちまるさんに長々コメントができます。
B
Re: PC の問題解決
2021/12/20 月 19:21
B 様
よかった。
私のデスクトップはとうとうご臨終です。
明日ノジマ電機から新しいマシンが届きます。
あなたのブログはサブのノートパソコンで今夜アップします。
今日は歯のマウスピースの誂えとパソコンの調達のために、歯科とノジマ電気が入っている亀有駅前のヨーカドービルまで、出かけていました。
返信無用です。
C
Re: PC の問題解決―フルトヴェングラー
2022/01/01 土 08:27
B様
明けましておめでとうございます。東京は好天が続いておりますが、最強寒波の到来で震え上がるお正月となりました。
早々とクリスマスカードをいただきながら、今回もレスポンスが遅くなり申し訳ありません。ただ、ホームページを通して O さんとの息の合った応酬を拝見して、お元気な消息は承知しておりました。今日は何とか年越しの夜を、新しいパソコンを使ってライントークの更新がホームページの事始めです。
さていろいろと書きたいことがありますが、体力の限界ですので、とりあえず、ワードで作成した年賀状の PDF ファイルと、懸案のフルトベングラーのそれらしいテキストが見つかったので、これも添付してお茶を濁すことにします。後者は香川 厚という人の「ある亡命論争(1)―フルトヴェングラーとトーマス・マンの場合―」(昭和50年10月31日原稿受理)という論文のなかに引用されているものですが、昭和50年の学位論文らしきもので内容は精査してみないとよくわかりません。びすこさんに品定めをしてもらったほうが早いと思いました。フルトベングラーについては、芳賀檀訳の「音と言葉」や岩波新書の「フルトヴェングラー」(脇圭平・芦津丈夫)が必読書だと思いますが、後者に収録されている二人の著者に丸山眞男を加えた「フルトヴェングラーをめぐって―音楽・人間・精神の位相」という座談会が刺激的です。
オミクロン株の市中感染が次々と報告されて新型コロナの感染者数がジワリと増え初めています。児玉先生の動画ではデルタ株とオミクロン株では変異が大きく、クラスターの追跡や隔離にこだわるより、検査を徹底して、保険適用にして早めに医療機関にかかる体制を構築するべきだということです。街中の混雑ぶりを見ると感染者数が急増しそうな予感がしますが、行政の対応は相変わらず検査に消極的で、重症化することがすくないので、医療資源が逼迫することはないと考えているようです。
新しいパソコンや新型コロナについてはまたあらためて。
C
Ein Neues Gutes Jahr(謹賀新年)
2022/01/01 土 09:47
C さま
さっそくに新年のご挨拶をありがとうございました。ちょうどこちらも年が明けたところでメールを拝受しました。
今こちらは 1 月 1 日の午前 1 時半です。少し前に夫とテレビのカウントダウンに合わせてシャンペンで乾杯しました。これまで― 2018/2019 年の年末年始まで―は、夫の郷里の友達の家で 10人くらいが集まって、午後 8 時頃に食事をしたあと飲みながらお喋りして時間を潰し 0 時に乾杯するのが常でした。手術があった 2019 年の暮れには私は安芸市の家で一人、夫は例年通り友人宅で新年を祝ったようです。2020 年、2021 年と規制が課されて例外的な大晦日になりましたが、多分今年の暮れも同じではないかと話しています。オミクロンが去ってもまた新種のウィルスが現れ、向こう 3 年はノーマルな暮らしは無理かもしれないと昨日もウィルス学者が言っていました。もっともこの 2 年近く予想は外れてばかりで、政府のいうことも学者の論も当てになりません。
昨日の午後は、昨年夏に亡くなった元社員の奥さんの家にプレゼント(お歳暮?)を持っていきました。一番の用事は、その社員に会社が掛けていた生命保険がようやく降りることになったので、その契約書に署名してもらうためでした。ご主人は 59 歳で亡くなり、彼女も今 59 歳だそうです。出身地はレーゲンスブルクでお母さんが存命なので、お正月には帰らないのですかと訊くと、感染が怖いから行き来はしないとのこと。そんなわけで、こちらでも一人でクリスマス・大晦日を過ごす人が増えています。この程度にストイックな暮らしは私は厭ではありません。
フルトヴェングラーに関連した論文をありがとうございました。そういえばトーマス・マンは彼と対照的で、戦勝国の受けは断然良かったですね。そのことが私はあまり気に入っていません。フルトヴェングラーについてさらに彼の死後かなり長寿だった夫人の見解が取り上げられたことがあり、それも興味深いのでまた機会がありましたらご紹介、と言ってもドイツ語ですが。
私が時々覗いている海外在住の日本人女性のブログの中に、フランス人と結婚して米国カリフォルニアに住む大阪出身の女性の日記があるのですが、彼女は全く普通の主婦の暮らしをして大阪弁でまくしたてながら、ときどきハッとするコメントをしています。こういう平凡そうな 40 代のオバチャン(自称)がドイツに住む同じ日本人バアサンに似た意見をもっているのが面白いと思ったことがほんの最近ありました。
「うち、第二次世界大戦でドイツが行ったことを全部ナチスの責任にしてるのって、なんか変やな〜という考えが前から折りに触れ湧いてたんよ。
ドイツには一瞬しか行ったこと無いし、ドイツ人の知り合いはおらへんし、普通のドイツ人は普通に良い人達やとは思う。
でもな、ユダヤ人虐殺を実行したナチスを選んだのは、他でもないドイツ人やんね〔真顔〕
ナチスは非合法なドミニオン手段で政権を奪ったわけでもなく、クーデターもバイデンジャンプも起こしてない。アナログ選挙で選ばれたのが、ヒトラー。
当時のドイツの事情を詳しくは知らんけど、ヒトラーの言葉に納得する人々がたくさんいて、すがる思いでヒトラーとナチスに賛同したのは事実。
それを、戦争が終わったら「あ、すべての責任はナチスなんで」って顔するんは、なんかおかしくない?」
ドイツの終戦の日を「(ナチスからの)解放の日」と呼ぶドイツ人の卑怯さに怒る私と同じ感想をもってくれて嬉しい。
次のブログはすぐに書き始めて、5 日頃にはお送りします。ラインの更新の方は、これから寝て明日ゆっくり拝見することにします。
今年も引き続きよろしくお願いいたします。
B
新年ブログ
2022/01/05 水 22:40
C さま
日本はまだ松のうちだと思いますが、こちらドイツも明日 1 月 6 日の公現祭 (Epiphany) までは一応お祭りシーズンということになっています。もっともお正月というのはこちらでは1 日とおまけの 2 日だけで、3 日からは店も開き会社も仕事を始めますが、実際にはこの 6日が休日なので工場などはそれが終わるまで本格的に稼働することはありません。うちも仕事の流れがあるから事務員を含め 10 人ほどが準備のために 3 日から出勤したものの、全員が揃うのは 10 日からです。
日本のコロナ感染者、案じていた通り急増し始めましたね。昨日が千人台で今日は 2600 人余り。風邪の季節ということもあるのか、お正月で密な接触が増えたためか。もっとも 2600 人と言えば 27 万人を超えたフランスの 100 分の 1 以下、それよりも驚くのは欧州各国の死者数でドイツは昨日 397 人、イタリア 222 人、フランスは 351 人。ちょっと不思議なのは感染者数が 1 日 20 万人を超えている英国の死者が 48 人にとどまっていることで、オミクロンは致死的ではないという説を裏書きしているともいえます。
ドイツ政府の方は一応常識的に 3 日から活動を始めましたが、信号(赤・黄・緑)三党は政権の座に就いたことを喜んでばかりもいられません。まあ、とにかく、前政権から引き渡された課題・問題が山積みで。ロシア対ウクライナ、さあEUはどうする。中国対アメリカの対立ではメルケルのように中国を贔屓にしてばかりはいられない。NATO対ロシア/ベラルーシの対決はどうなるか。
でも何より今騒ぎになっているのは、EUが原発を一定の条件下で「持続可能なエネルギー」に分類したことで、ドイツを初め各国の緑の党は怒り狂っていますが、この冬の電力不足は国民の生活を脅かす事態になっており、社会民主党と自由民主党はEU委員会のこの発表を歓迎しています。この一日から半年間はフランスが欧州連合会議議長国なので、そこと事を構えたくないショルツ首相も原発大国フランスに友好的、やはり三党連立となるとそれだけで舵取りには苦労するようです。国民の大多数はちょっと意地悪に「お手並み拝見」という姿勢です。
アメリカはバイデンの人気が急落していて副大統領のハリスを嫌う人も多い。民主党が今年の中間選挙で大敗したら全アメリカはもうメチャメチャになるのでは? ドイツでも今年は州選挙が目白押しで、政権をとったばかりの社会民主党にとっての試金石となります。
日本の岸田政権はそこそこ安定していているように思えますが、いかがでしょうか。岸田さんは常識的な人に見え、支持率もわりあいに高いですね。ちょっと異常な人(一部妻も合わせて)が続いたので、尋常であればまあいいか、という気持ちが国民の中にあるのかもしれません。
さて、新年のメールで申し上げたように 2022 年のブログ第一号をお送りします。「形見分け」というタイトルは新年にふさわしくないかもしれませんが、自分の年齢や今の世情を考えると夢にあふれた明るい話題というのも見つけにくく、亡き人・病む人・老いる人の中にあって人生の光を見るのも有意かな、などと考えました。
昨夜インターネットで読んだ記事にセネカの死に言及したものがあり、その弟子ネロに自死を命じられたこのローマの哲学者を思いながら眠りにつきました。先日従弟への手紙にも書いたのですが、この年になると歴史の遠近感がだいぶ違ってきます。
それではまた。
びすこ
欧州の現状報告とブログ
2022/01/22 土 03:10
C さま
一月も下旬となりました。こちらの人は「クリスマスから一か月近く経ったわねえ」などと言っていますが、私は冬至からちょうど一か月、と数えています。つまり、現在の日照時間は 11 月下旬とほぼ同じということです。それでも、ああ、冬はまだ 2 か月近く続く・・・
我が家の裏手の藪には今ハシバミの花が咲いています。花と言っても猫の尻尾みたいな尾状花序で、雄花だけあって色もくすんだ黄色なので人目を惹くこともありませんが、浴室の窓からこれが見えると「ああ、年が明けた」と実感します。私にとっての新春のシンボル、このあとしばらくして葉っぱが出て来ます。日本でこの木や花を見かけることは滅多にないでしょうね。
欧州の話題といえばどうしてもコロナのことになりますが、相も変わらず感染者は多くて、死者も日本などアジアと比べると大差があり、それなのに政府も一般市民もそのことを本気で案じている様子はなく、もっぱら政治的な議論に利用されています。
現在、感染者数に関して最悪なのはフランスでここ数日 40 万人を超えています。英国、スペイン、イタリア、ドイツなど人口が 5 千万以上の欧州国では 10 万人から 15 万人。死者数は 200 人台とか 300 人台。オミクロンは致死的ではない、と言いきれるかどうか。(私は毎日 Covid Live-Coronavirus Statistics-Worldmeter でチェックしています。)
そんな中でフランスは規制の「解除」に向けて大きく舵を切り始めています。イベント参加の人数制限撤廃、屋外でのマスク着用義務解除、レストラン・バーなどでの立食許可、映画館・劇場での飲食も可。
これまで規制が日本に比べて厳しくそれも義務化されて罰則があったので、国民が窮屈に感じていたことは確かですが、状況はちっとも良くなっていないのにすべてを緩和する背景には、国民の間で「もうたくさん」という怒りがあり、こんなに制限したところで事態は改善しないじゃないかと叫ぶ声が高くなる一方なので、このままでは 5 月の大統領戦に不利という現マクロン政権の思惑があるようです。40 万人を超えたら、もう 50 万人でも 60 万人でも大した違いはない、というところでしょうか。
ドイツは相変わらず接種反対派の声が大きいですが、それは反対派が多数を占めるという意味ではなく、ただ、デモやらSNSでの呼びかけでその活動が目立つということです。何かを規制してファシストとか独裁とか言われるのを極端に恐れる政府・政治家は接種を義務付けてはいませんが、実態は接種なしだと万事に亙って行動制限があるので、いっそのこと、最近ついに義務化に踏み切った隣のオーストリアのように強制した方がいいのかもしれません。
前政権のとき、当時の保健大臣を素人だとボロクソに罵り弾劾していた今の社会民主党の新大臣は、彼の専門が医学だというので大きな期待を背負って登場したのに、前任者と同じくぱっとしない実績です。そりゃそうですよね、大臣の専門知識で事態の打破ができるはずはない。
テニス選手のノバク・ジョコヴィッチのオーストラリア入国禁止措置のことは日本でも報道されていると思いますが、こちらでも先の月曜日に最終決定が下されるまで、どの国でも大騒ぎでした。世界一位の王者であるとか圧倒的な人気を誇るとか言っても、それで法律を曲げるわけにはいかない、という判断には意外と賛同者が多かったのですが(ドイツでは 7 割強)、これはジョコヴィッチの傲慢不遜な父親が、オーストラリアに入れてもらえない息子について「イエスのように十字架に架けられている」という見当違いの発言したことに反感を覚えた欧州人が多かったこともあるでしょう。一般に欧州でセルビア人への感情がよくないことも影響しているかもしれません。旧ユーゴの中でクロアチアやスロヴェニアが既にEUに加盟しているのに、セルビアが依然として排除されているのは理由がないわけではないと、こちらのセルビア人に接しまた同国政府の態度を見て感じることがあります。
ドイツはコロナも問題ですが、ソ連のウクライナ侵攻の危機で外交にも難儀しており、またアメリカとの関係でロシアからガスを輸送するノルトストリームをどうするかという難問があります。さらに、このたびEUが原発を一定の条件下で「持続可能なエネルギー源」と位置づけ、フランスを筆頭にどの欧州国もその判断を歓迎していることが、ドイツを孤立させショルツ首相を悩ませています。浮世離れした緑の党の主張はまるで新興宗教のカルトのようだという声は昔からありましたが、政権の一翼を担うようになると、その世間とのずれが目立ってきています。ここ 2, 30 年来一貫して緑の党が主張する環境政策を支持してきたメディアにも、微妙な変化が見られるようになりました。
こんな具合で、私などはもっといろんな難問が次々に出て来て、「禁止政党」とも呼ばれる極めて官僚的な緑の党が新しい不要な法律を設ける暇がないように願っています。政権誕生から 2 か月で、既に役人の数は 1 千人増えたそうです。
このところ燃料の価格が大幅に上がってしまいましたが、幸い今のところシュヴァルツヴァルトでの降雪は限られており、温度も極端に低くはないので何とか凌げている、というところです。
さて今回のブログ、いつものようにどうということのない内容にしては結構長くなってしまいました。読んで下さる方々、生き馬の目を抜くような業界の第一線で奮闘というケースはほとんどないと思われますので、お暇な折りにどうぞ。
B
ブログ送ります―ワクチン接種論議
2022/02/06 日 23:57
C さま
立春が過ぎていよいよ春ですね。こちらではまだまだ冬と思っていたら、昨日から少し温度が上がって春一番に似た風が吹いています。「冬から春へ」を祝うカーニバルは今年も禁止になりました。これで 3 年続き。やれやれ、と特に中高年層は思っているはずです。そんな無礼講を特別設けなくても、昨今の若者は一年中無礼講ですから。などと、典型的なバアサンの口調になってしまいました。
またコロナの件ですが、ひょこむにろれちゃんが「外国と日本では、認識が違うのね」というブログを書いていました。おっしゃる通り違います。もっとも外国といっても様々、欧州では南北差、東西差もありますが、早く言えばこの 2 年余りの規制にはもううんざり、ということで、先日ニュースにちょこっと出ていましたが(あまり大声で言えることではないので)、年寄りが罹かりやすい、彼らの死亡率が高い、という理由で、コロナに抵抗力のある若者、果てはほぼ安全な子どもまでが、どうしてこうも規制を受けねばならないのか、という抗議もあります。経済活動の中心にある人間がトバッチリを受けるのはおかしい、というのです。
お年寄りを大切に、というのが(本気かどうかは別として)国是になっている日本ではとても口にできない台詞ですが、確かに今の政府の措置はやり過ぎではないかとも思います。欧州の中ではドイツが断トツに厳しく、これもちょっと昔を思い出させていやな気分になることがあります。
しかしデンマークや英国のようにほぼすべての制限を外して、それで大丈夫かなという危惧は拭えません。もともと指示に従うのが厭で「規律」という言葉にアレルギー反応を示す国民だから自主的な防止策など望めず、そのために国中・大陸中にコロナが広がってしまったわけなので、何でもしていいよ、いや、何も気にしなくてもいいよ、となったら、収拾がつかなくなるかもしれません。まあ、今は様子を見るほかないですね。ドイツだけはマスク義務は継続だし、4 度目の接種を義務化するかどうかという議論も始まっています。フランスやスペインとは違って接種が義務化ではないのは、国民の自由意志に任せている? とんでもない、実態は義務化以上です。
その分接種反対の声も強くて、反対デモが続いていましたが、なぜか、いったいどういう口実でか、デモは禁止されました。しかし敵もさるもの。大勢が集まってプラカード掲げて通りを練り歩き、警官に「デモは違反だぞ」と注意されると、「いや、俺達はみんなで散歩しているんだよ、この国では散歩もいけないの?」と言い返す。それで最近は接種反対デモではなく「接種反対散歩」と呼ばれています。
私は常識人ですから接種支持、接種義務化もやむを得ないんじゃないかと思っていましたが、今はちょっとどっちつかずの心境です。まず、ほんとに効くんでしょうか。こういう流行病はほっといても、ある程度の犠牲者を出したら自然に鎮まるのではないか、スペイン風邪だってそうだった、と思うことがあります。それに今の医療システムでは死者はかなり抑えられていますし。
こんな疑問を持つのは、一つには報道の仕方に問題があるからで、誰かちょっと名の知れた人がコロナで亡くなると「彼は接種していなかった」というのですが、接種済みでも亡くなった有名人はかなりいるはずなのにそれは報道しない。それに、こう言っちゃなんだけど、亡くなった有名人ってやりたい放題(酒・異性・生活態度)の歌手やタレントが多く、コロナが引き金にはなったとしても、いずれ高血圧か高脂肪、動脈硬化などで短命に終わることになっていたんじゃあ、とも思う。いわば自己責任。
なんだかメディアと政府とがグルになって国民を愚弄しているみたいな気がします。その一方で製薬会社は小判ザクザクの大儲け、元政治家のロビイストが製薬業界で暗躍。私は昨年末の 3 回目までは従順に接種しましたが、4 回目はやらない、と夫に断言しました。彼はこの国の大勢のシニア市民同様、高血圧・心臓疾患の持病を持つので(薬でずっと抑えていますが)この種の疫病には抵抗力がないと恐れていて、4 度目でも 5 度目でも打つと言っています。
人それぞれなのに、人それぞれの対応が許されない、というのが腹立たしいのです。
また一旦かかって回復した人は接種済みと同じように扱われていたのが、最近回復後 3 カ月経ったら無効ということになりました。接種から次の接種までの期間もどんどん短くなっていきます。医学界も政界も暗中模索で、分からないことばかりなので物は試しとばかり市民生活を犠牲にして勝手な法を作る、こんな茶番劇に付き合ってられるか、と思うようになりました。
今の社会民主党主導政権で保健大臣は同党のラウターバッハという医師資格を持つ議員が担当しています。前の大臣が医学には素人だったからと、今度は大きな期待を受けて登場したのですが、この人も右往左往しており朝令暮改、RKI(ロベルト・コッホ研究所)のトップとも歩調が合わない。そりゃそうです、医師が大臣になったから疫病が収まるなんてことありえない。そもそも一人の人間が科学者で政治家というのが矛盾した存在なのです。
いつもの通り「怒りの鉄拳」みたいになってしまいました。最後にちょっとなごんでいただくため、窓から撮った裏の背戸のハシバミの花の写真を。ちょっとぼけていますし、花そのものも全然きれいじゃないのですけど、これは私にとって最初に春を告げる花です。この背戸の小藪はカナリアを捨てる場所ではなく、掛巣やシジュウカラがたむろしています。春を告げるブラックバード(和名クロウタドリ)がもうすぐやってくるでしょう。
B
ブログ―コロナ後の準備、時計工房
2022/02/22 火 00:35
C さま
あと一週間で 2 月も終わり。こちらは 3 月にも、4 月 にさえも降雪がありますが、でも一番厭な時期は終わったというところです。日の出が随分早くなりました。
コロナ騒ぎが始まる前から、私の住むあたりでは家の改築工事が盛んになっていました。その理由は金利の低下です。うまく借りるとほぼゼロに近い。それを利用して古い農家など特に屋根の葺き替えをする光景があちこちで見られました。二百年以上という農家も珍しくなく、それだけに修理・維持には大変な費用がかかるのです。
一般の民家ではありますが、中にはそれを休暇用のペンションにして都会からの旅行者に貸しているところも結構あります。以前は 3 世代が住んでいたけれど、今は中年夫婦だけになり二階・三階の部屋が余っているのでそれで商売して、おもにそこが改築の対象です。家の老化、低金利、そこへコロナでしばらく客がない、ということで、この時期に近代化(外はあまり変えませんが部屋や浴室など)して、コロナの後の観光客増に備えようとしています。
我が家からさほど遠くないところに古い農家を集めた野外博物館があります。飛騨の高山に似た光景が見られ、実際に耕している畑もあり(一部では古代の稗なども栽培)、家禽・家畜もいて人気があるのですが、例によってコロナで閉鎖が続いていました。
そこの入り口近くに古いレストランというか食堂みたいな所がありました。それを最近大々的に建て替えて大きなレストラン/カフェ/店舗にしたという話をウチに出入りしている大工さんから聞いたので、土曜日にお茶を飲みがてら行ってみました。黒い森で製材所がたくさんあるので、建物はもちろん木造です。地元産業への貢献になりますね。実際製材所は好景気に沸いています。写真を添付します。
この施設の名前はウアヴェルク(UHRWERK)、時計工房という意味です(ERLEBNISDORFとあるのは、体験の村という意味)。以前のブログでも紹介した通り、黒い森には時計で生計を立てている村々が散在していました。工房の写真はありませんが、絵が残っているのでそれもご覧下さい。
工房風のレストラン、と言っても中はきれいに近代化され、とにかく大きいのでクラシックな部屋、カジュアルなコーナー、エレガントなスペースと好みで選べます。今はまだ来客が限られていますが、春から夏にはさぞ賑わうでしょう。3 月初めからは、接種証明を必要とする施設では入館者が接種済みということでマスク着用義務は外されるようです。スイスも同様です。多分アルザスも。それでうまく行くかどうか、感染者が急増する可能性もないではありませんが、今はみんな新型コロナをちょっと面倒な風邪程度と見なしたがっているので、慎重を期してこれ以上制限を維持するのはむずかしくなっています。
あ、そうそう、春を告げるマンサクを買い物の途中で見かけて、そういえばラインで蝋梅が話題になっていたと思い出しました。でもその蝋梅は黄色い樹の花だったので、あれっというところでした。日本の我が家にも蝋梅はたくさん咲きますが、樹に咲く花ではなく、また花の色も赤黒いのです。調べたらこれはクロバナロウバイというのだそう。全く手がかからず、放っておいても勝手にたくさん花が咲きます。年に一度、灌木を剪定してもらう程度です。
こちらの家の庭は「花も紅葉もなかりけり」という冬枯れの風情ですが、よく見るとスノードロップの芽が出始めています。花の名前は結構長いのが多くてそれだけで 7 字くらいになるので、句にするのがなかなかむずかしいですね。
それではまた。次回は 3 月に。
B
Re: ブログ
2022/02/24 木 11:38
B 様
2月もたちまち半ばを過ぎて、23日が休日で、? と思ったら天皇誕生日ということでした。プリンス・ヒロが今は今上天皇ということで、今更ながら、新型コロナ感染によって時間間隔が加速されて歳月の経過を再認識しました。さて北京五輪が終わったら案の定ウクライナが風雲急を告げてきましたが、日本ではオミクロン株の市中感染はどうやらピークアウトの気配で政府は外出規制を緩和する方向ですが、感染者が高齢者に移行するにしたがって死者数や病床の不足が医療崩壊を顕在化して岸田政権のコロナ対策の失敗があきらかになってきました。
さて、あなたにメールを書きかけては雑音がはいり、またパソコンとスマホが変わったこともあって、ついつい返信が滞ってしまいました。
以下は、前回のあなたのメールに対する返信の下書きですが、いちど紛失したものをヤフーメールの下書きフォルダから引っ張り出したものです。また修正していると送信の機会を失うので、コロナに関してはそのままコピペしたものをお見せします。
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ウクライナで一触即発の緊張が続く一方、北京オリンピックが開幕し、日本では予想通り、オミクロン株が爆発して各地で医療崩壊の様相です。
落ち着かない世情とは裏腹に、東京の気候は 1 月 6 日の大雪の後、穏やかな日が続いて、雨(雪)らしい雨もなく乾燥が続いていたところに昨日は爆弾低気圧の通過で久しぶりにみぞれが降りましたが、気象庁が繰り返し警告を発していたほどには積雪もなく、今日はすっかり晴れて朝シャーベット状に残っていた雪もほとんど消えたようです。
穏やかな建国記念日になりましたと書きたいところですが、日本ではオミクロン株の爆発で予想通り第 6 波に襲われてコロナによる累積の死者数が 2 万人に近づき、2 月 5 日に 10 万人を超えた全国の陽性者数はいったんピークアウトの気配を見せましたが、再度 10 万人に近づいています。東京都は 1 万 9 千人近くでこのところ前の週の同じ曜日を下回る日が続いていますが、「検査を受けず、医師が感染と診断した」“みなし陽性”の患者も感染者として数えるという統計なので、実態はよくわかりません。重症者数も東京都は独自の基準でカウントしていますが、病床の逼迫にはまだいたっていないとして、緊急事態宣言の申請はしないと頑張っています。科学的根拠に乏しく効果もはっきりしないマンボウで飲食業などに時短要請して給付金を出すという手法は変わりません。
大阪ではほぼ医療崩壊で保健所が機能していないので、あとから数値を修正するようなことが常態化しています。相変わらず PCR 検査やゲノム解析に消極的な厚労省の姿勢は不変で高齢者や他の疾患によりコロナ死亡者にカウントされないで亡くなったコロナ感染の死亡者は多数あるはずですが管理された統計しか発表されません。政府は 13 日で終了する予定だった 13 都県の蔓延防止等重点措置を 3 月 6 日まで延長することを決め、新たに高知県も12 日から適用対象としました。これで全国 36 都県がマンボウの適用地域となりました。20 日にマンボウの期限を迎える大阪は、「まん延防止等重点措置」の延長か「緊急事態宣言」を政府に要請するかを 14 日に判断することになるでしょう。
コロナ病床の不足をカバーするために重症化リスクの少ない陽性患者を「自宅療養」という名で退院させ、PCR 検査陽性で救急搬送されても受入れ病院が見つからず自宅待機を余儀なくされる医療難民が急増しています。
ワクチン接種と適切な検査体制の整備がコロナ対策で最重要なことは自明であったはずなのに、昨年の 9 月から 11 月の沈静期、失われた黄金の 3 か月の期間に科学的根拠もなく 3 回目のブースター接種を 2 回目から 8 か月目と厚労省が決めたことが決定的な対策遅れになったことが指摘されています。
自宅療養者約 44万人…相次ぐ “コロナ自宅死”【 2 月 10 日 (木) #報道 1930 】
オミクロン株がこれまでのデルタ株とは起源も性格も大きく異なる変異株なのに政府の対応は相変わらずピント外れの後手後手の対症療法の延長で、さらにデルタの変異株にも注意しなければならないことが指摘されています。
児玉教授が緊急提言…デルタ変異株を警戒せよ【 2 月 4 日(金)#報道 1930 】
転換 児玉龍彦×金子勝【新型コロナと闘う その先の世界へ】20220205
さて
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というわけで、少し付け加えるとすれば、各地の高齢者福祉施設や保育関連施設でクラスターが発生し、オミクロン株は重症化しにくいということも気休めにしか過ぎないことがわかってきました。感染がワクチンの効果が薄れてきた高齢者に移ってくるにしたがって死者数も漸増し続けて医療資源はとうに限界を超えています。
昨日の日本の死者数が300人を超えて、ドイツ(306人)を上回ったということをドイツ、ハンブルク在住の医師村中璃子さんのレポートで知りました(ググってみると仮名でベルンハルト・ノホト熱帯医学研究所研究員)。これはインターネットラジオの radiko で文化放送の「おはよう寺ちゃん」の 5 時台放送を聞いて知ったのですが、この番組は世界中の日本人の現地滞在者に国際電話で結んでリアルタイムの現地レポートを放送するというもので、曜日によってレポーターの国が変わるので世界の現地情報を知るのに重宝しています。スマホにこのアプリを入れれば、タイムフリーですぐに聴取できます。ワクチン対策の遅れと、相変わらずの検査に消極的な厚労省の対応がこの医療崩壊を引き起こしていることは先のユーチューブで繰り返し指摘されています。さすがに支持率低下で遅ればせながら国産のワクチンや治療薬開発に注力する姿勢を見せていますが今回も周回遅れの感は否めません。
ここにきてオミクロン変異株 BA.2 の重症化率が高いという気になるデータもでてきています。
現在各種のコロナ治療薬が承認済みまたは開発中ですが、ウィルスの変異とのいたちごっこでなかなか終息することはなさそうです。
レムデシビルやソトロビマブといった外国製の治療薬が使えるようになっていますが、服用中のほかの薬との飲み合わせや投薬のタイミングなど難しいので、日本では塩野義などの国産治療薬の承認待ちということのようです。
というところまで書いてきたところで、今日は午後3回目のワクチン接種のため中川を越えて細田の診療院まで出かけなければなりません。
時々刻々変化するウクライナ情勢についても書きたいところですが、とりあえずユーチューブを 1 本紹介して後程続きを書きます。
このウクライナ侵攻はプーチンも相当な準備をして臨んだものと思われますが、かぎを握っているのは中国の動向と思われます。
EU の側ではショルツがノルドストリーム2 の停止を決断したのは、大きかったと思います。
それと日がたってすでにご存じかと思いますが、8 期生A組の T.T. さんの訃報が O さんからありました。別便で念のため G メールを転送しておきます。
C
訃報
2022/02/24 木 17:09
C さま
T.T. さんの訃報、ありがとうございました。私は 1 年生でE組だった人と 2, 3 年でD組だった人以外はあまり知らないのですが、70 歳を過ぎていよいよそういう時期になったかと歎息しています。8 期は早世の人が多かったけれど、最近は少し落ちついているようだと先日考えていたところでした。CC の中に N.S. さんと T.J. さんがあったので、改めて胸が痛みました。N さんは 10 年余り前にお姉さんを亡くされ、私自身が 1 年半前に妹を失ったとき彼女の気持ちが実感できたのですが、その後、昨年でしたかご主人が物故されたとのこと。また、ショックだったのは先日の M ちゃんからの手紙〔昔懐かしい郵便です、彼女は私のクリスマスカードへの返事をいつも 2 月に手紙でくれます〕に J さんの 40 歳そこそこの息子さんが癌で逝かれたという悲報が認められていました。家庭問題の中でずっと J さんの支えだったそうで、それでなくとも子に先立たれる母親の悲しみはいかばかりかと、これには言葉もありません。親がないのはこの年では仕方がありませんが、兄弟姉妹、果ては子までが世を去るケースも出てきて、家族がだんだん萎んでいくという感じです。今の私の年齢はちょうど日本女性の健康寿命にあたり、これからできるだけ長く人さまの世話にならずに済むようにと願うばかりです。これはフォーラムでいちまるさんに話したことですが、高知県は女性の健康寿命は全国で 19 位とまずまずなのに、男性はなんと 42 位。お酒の量が影響しているのだと思います。規律というのが苦手という県民性もあるでしょう。私の田舎では園芸栽培が盛んでナス、キュウリ、トマトその他を簡易温室で育てていますが、なんとそのビニールハウスの一隅に畳の座敷を作ってカラオケも備え、仕事が終わると周りのハウスの人たちと宴会をやるとか。仕事のあとに息抜き・娯楽が必要なのは分かりますが、せめて週 1, 2 度にするなど自ら律してほしいものです。コロナが流行る前から郷里では、肝臓がんや膵臓癌、腎臓の問題で 60 代・ 70 代で亡くなる知人の話を聞いていたので、役所・保健所はそのことに対策を講じる必要があると思っていました。
ウクライナへのロシアの侵攻はあまり驚きません。様々の権益が絡まっていて、EUがロシアに逆らえないのも当然です。特にドイツは今のショルツ首相の先輩シュレーダーを始めロシア国営企業ドイツ支部の重役として高額報酬を手にしている人がおり、政界を引退したときの「天下り先」をロシアが提供してくれるので騒ぎたくない。ロシアで再就職できなければウクライナ企業のコンサルタントに、と考えている人ももちろんいます。ウクライナがロシアの属国になればなお結構。社会民主党ではないけれど本質的に共産主義者であるメルケルにとっても、あの辺は保険なのだと思います。いつの世も戦いで斃れるのは兵卒・民草、将軍は戦略会議でキャビアにシャンペン。樽俎折衝で戦争回避ではなく自分の楽しい老後プランを練っているのですから、戦争勃発のニュースに拳を振り上げるEUの様も笑劇にしか見えません。
B
ブログと欧州のニュース
2022/03/10 木 00:20
C さま
春の気配が濃くなってきたのは、このところ快晴が続いているせいでしょう。木々はまだ裸ですが、薄黄・薄紫など微妙な色の芽が日々大きくなっていきます。楓科の木の芽は、和服の色にしたいような渋い紫です。
世界中がロシアのウクライナ侵攻の話で持ち切り、私は TV の喧しい報道に耐えられないので、もっぱらインターネットのニュースをあちこち、アメリカの新聞を含めて覗いています。
ひょこむでも話題になり、女性仲間が「もう何が何だか分からない」というので、私もコメントしました。先回のブログにも書いたように、ゴシップの楽しみ、女童子(おみなわらべ)の漫ろ事です。親しい社交仲間はろれちゃんと私を含む 4 人です。
そのコメントをここにコピーしておきます。
1. ロシアのウクライナ侵攻で助かった、あるいは一息ついた、欧州の政治家はたくさんいます。エネルギー欠乏、移民問題、経済停滞、国家債務の増大、出口が見えない問題だらけですが、これは国民の不満を逸らせるいい機会だし、メルケルが停止を決めた原発操業を再開する可能性も、「ロシアのせい」と言えるし、ロシアが悪者になればすべてOK。つまりどの国でも現与党は楽チン、プーチンさんありがとう、です。マクロンも、山積する国内問題をよそに、再選はほぼ確実。(ドイツの原発停止があまりに非現実的であることは分かっていたけれど、誰もそれを言い出せなかった。)
CNN や BBC は、私もうとっくに聴きません、見ません。ただ、比較的中立で冷静な新聞・放送は日本人にはほとんど知られていなくて、残念です。
ドイツの元首相はロシア国営企業の顧問として高給を得ているし、バイデンは息子がウクライナからたっぷり報酬をもらっていたし、どの政治家も叩けば埃がもうもう。狐とタヌキの化かし合い、馬鹿らしくて「戦争反対」という気にもならない。
2. プーチンは悪漢に近いですが、彼の立場にも同情すべき点はあると私は思っています。まず EU の専横が問題。どんどん東に進んで、最近ウクライナの EU 加盟の手続きを始めたそうですが、ロシアからすると EU に西も南も囲い込まれそう。(北は海、東はシベリアだから EU はいないけど)
NATO も拡大され、かつての衛星国・属国のポーランドやフィンランド、バルト三国にミサイルが配備されるとなると、脅威を感じるのは無理もない。もっともソヴィエト連邦時代にこれら属国を虐めていて、ロシア嫌いの国が多いのは自業自得ですけどね。
ロシアはウクライナへの侵攻を中止すべきですが、EU もちょっかいだすのを辞めるべし。ここは中立地帯とするのがいいんじゃないですか。ウクライナが EU 加盟を望むのは、欧州各国つまり EU からの支援金が魅力だからでしょう。ルーマニアやブルガリアはそれで食べていっているんだから、俺達だって、と思いますよね。
EU が扶養する国がこれ以上増えてほしくない。おかげで拠出金額第一位のドイツの税金は上がりっぱなしで、これ、私には切実です。
それはともかく、戦争というのは、相手の面子を丸つぶれにしては破壊に向かうしかありません。だから核兵器で脅しているのです。ちょっとだけプーチンにも譲ってあげれば? 泥棒にも三分の理、とまではいかずとも、まあ一分くらいはあるんじゃないでしょうか。
3. 私ね、日本にとって一つだけ良いことがあると思うのです。今回欧米その他の国々が一丸となってロシアを責め、制裁を課していますね。これを見て、中国など、どこかの国に侵攻したり攻撃を仕掛けるのに慎重になるんじゃないかと。台湾もちょっとほっとしているかも。でもでもでも、アジアが欧州を応援するほどには、欧州はアジアを助けてはくれない。所詮他人事、人道主義とかなんとかきれいごとを並べて、はい、チョンです。白人の世界じゃないからね。日本人はそれをちゃんと知っていた方がいいですよ。
この一連のコメントを書いてから、フランス在住の人のブログを読んだら、ロシア産の石油への依存度は仏 13 % 、伊 12 %、ドイツ 30 %、フィンランド 66 %、ポーランド 67 %とありました。
驚いたのはポーランドとフィンランドの現状。ソ連時代の手ひどい扱いから冷戦後の世界ではすっかり欧州寄りになり、そのことも今回のロシア侵攻の一因ですが、ロシアがどれほど危険な国かを知っていながら、こんなにも頼り続けるなんて。これは、いざというとき EUが何とかしてくれるという甘えのせいとしか思えません。この分では他の東欧諸国の危機管理もなってないと思います。
ただし、チェコでは石油への依存度を減らすために原子力発電がかなり盛んで、それはいいとして、ドイツは自ら原発廃止を高らかに宣言しておきながら、実際のところはいざとなったらドイツ東部へはチェコから電気を輸入しようとしているフシがあります。ドイツ西部なら、フランスとベルギーから分けてもらえる。自国は原発無しでクリーンな国と自慢しつつ、隣国が原発で作った電気を買う。まことにアッパレな国策ですね。
同じブログに、最近フランスの薬局でヨウ素剤を求める客が急増しているとありました。これはロシアから原発を攻撃されて放射能が拡散した場合に備えているのでしょう。ロシアは思いのほか追い詰められて核兵器の使用も辞さないと言っていますから。
面白いことに、先日親しい人から私の夫は日本国籍を有するかという質問がありました。欧米では 二重国籍はよくあって、外国人と結婚している人にはその特典がすぐに与えられるのです。でも日本では許されてないというとびっくりしていました。
どうしてそんなことを訊くのかと思ったら、欧州に核爆弾が落とされたとき、日本に逃げられるから、というのです。こういう反応は私にはちょっと分かりにくい。そういえば 2011 年の福島原発事故のあと、東京の在日ドイツ大使館では全員が神戸の領事館に逃げたそうです。一部帰国した人も。知り合いの英国人は友人のいる北海道に避難したもののすぐ戻って来て、冷静な周りの日本人を見て「自分は馬鹿だった」としょんぼりしていました。
日本人の危機意識が低いということかもしれませんが、本当に危機感を持っていてその対策が必要と思っているのなら、敵になる可能性の高い国にどうしてこうまで依存するのでしょうか。グローバル化の負の部分は、コロナで中国との貿易が途絶えたときいやというほど経験しているではありませんか。
かくいう日本も、ウクライナの小麦に頼っている分、これからパンが高くなる、というのですが、余っている米の粉でパンを焼けばいい。私なんか小麦粉のパンと米粉のパンとの差はあまり分かりませんし、分かっても気になりません。
国民生活の必需品に関しては、ある程度は自給を確保しておかないと。ドイツの小麦粉の自給率はほぼ 100 %です。酪農は南が盛んですが、穀物畑は東部に多いので、東西ドイツ再統一のおかげです。
今回のブログですが、絵が 3 枚+になりました。多すぎますか。三枚目のは適当に組み合わせて下さって構いません。
最後におまけの写真。やっとわが家に咲いたスノードロップです。これ、日本語でマツユキソウというと聞いて、子どもの頃に読んだ「森は生きている」を思い出しました。女王様からの賞金欲しさに継母が極寒の 12 月の森に女の子を森に行かせる話。ずっと、どんな花だろう、と思っていました。
マルシャークのこの物語は講談社の少年少女文学全集で読んだのですが、一昨年日本にいたとき、全集のいくつかを倉の二階に見つけました。自分と関係ない物は何でも捨てる母が、どうしてこれらをとって置いたのか不思議です。
花瓶は東の端のザクセン州の町で買ったもの。マイセンのある辺りなので今でも陶磁器の生産が盛んですが、これを買った店で留守番をしていた老婦人が「昔の東ドイツの方がよかった。東西ドイツ統一なんかなければよかった」と悲しそうにつぶやいたのが忘れられません。いつの時代にも時の歩みに取り残された犠牲者はいるものです。
それではまた、多分半月後に。ウクライナのことを書きたいと思っています。
B
Re: ブログと欧州のニュース
2022/03/15 火 07:36
B 様
日本では新型コロナのオミクロン株による感染爆発もどうやら沈静化し、政府は来週で大阪府以外の東京など 17 都道府県の蔓延防止等重点措置を解除するようです。お天気も穏やかな日がつづき、昨日は東京で最高気温 24.1 度、小田原など夏日になったところもありました。ただ朝晩の温度差が大きく、夕方 1 枚減らして外出すると、北東からの強風で震え上がりました。
さて、今回も充実したブログとともにメールでドイツ側からみたウクライナの現状分析を興味深く書き送っていただきました。ウクライナの進行が予想を上回るスピードで、新型コロナで加速された時の運行がさらに桁を挙げて進行しているような毎日です。プーチンのおかげで、地球の裏側の危機が我々の日常生活に直結していることを実感しています。日本では米欧側から見た情報がとくにマスコミでは多いのが事実ですが、今回のあなたの分析でいろいろと腑に落ちました。
合理的に考えればほとんどメリットのない、ウクライナ侵攻を北京のオリパラ開催中に引き起こしているプーチンの頭の中を理解するのははじめは当惑でしかなかったのですが、いろいろな情報を総合し、専門家の発信を集めて歴史的経過をたどってみると、それなりの必然性があったとわかってきました。ソビエト連邦の瓦解に端を発し、1997 年の反ロシアのGUAM の結成、直接的には 2014 年のウクライナ騒乱(親ロシアのヤヌコーヴィッチ政権崩壊、ユーロ・マイダン革命)以来のドンバス戦争、ロシアのクリミヤ併合以来の小競り合いがくすぶりつづけていたのを、アフガニスタン撤退で求心力低下したバイデン政権や選挙を控えたマクロン、メルケルから引き継いだばかりのショルツ、など西側の手薄な今が好機と考えて、北京の開会式に出向いて習近平に耳打ちしてから周到な準備の上で、ことを起こしたようです。
旧ソビエトのペテルブルクで法律をまなび、KGB で組織と人脈のマネージメントを習得して、ひとりよがりの論文*(「ロシア人とウクライナ人の歴史的一体性」)までものして、旧ソビエト帝国の復活をもくろんだプーチンの野望は21世紀のヒトラーともみえますが、得意の偽旗作戦では、ウクライナ側をネオナチよばわりしています。戦車で市街を無差別に蹂躙しながらインターネットや SNS を駆使して何でもありの情報戦を展開する 21 世紀の総力戦を、案に相違してすでに 2 週間以上も続けていますが、どうやらクリミヤ併合に味を占めた「短期の電撃作戦」の目論見違いに気が付いて、正しい情報を挙げなかったなどの理由で幹部を懲罰したとの情報もあります。「絶対的権力は絶対に腐敗する」のアクトンの言葉を地で言ったプーチンのまわりには耳障りの良い情報しかあげなかった側近しかいないのでしょう。1 日の戦費が 2 兆円との試算もあり、経済制裁の効果もあってロシアの経済が壊滅するのは時間の問題でしょう。
次回のウクライナ情報も楽しみにしておりますが、日本の何人かの信頼できる専門家の分析もありますので、KBC のライントークで紹介したのですが、そのうちご参考までにユーチューブを 4 本ご紹介しておきます。
ちょっと長いですが最後まで視聴してみてください。日本は安保条約があるからいざとなればアメリカが助けてくれるのでしょうか。 NATOの地域協定と比較すると日米地位協定の異常さが際立ってきます。
以下は日本記者クラブの「ウクライナ」についての連続講演です。3人ともそれぞれの分野の専門家ですが、とくに元駐ウクライナ大使であまりマスコミには登場しない角茂樹氏の講演はためになりました。
4. 角茂樹 2022.3.10
今朝 1 輪だけ咲いた水仙を添付します。
次回はウクライナに関するブログを考えていますが、そちらは「ソフトパワー」の方ですので、戦闘的な話はこのコメント欄に書き連ねます。
お三方のビデオ、拝見しました。廣瀬・小泉両氏は講演ですから分かりやすかったですが、伊勢崎氏は早口の上に滑舌が悪くて聞き取れない箇所が多々ありました。大学で教えているなら、内容は無論大切ですが、話術の訓練を受ける必要があると思います。口の重い人を私は嫌いではない。ペラペラ男より好きなくらい。しかし職業によってはそれでは失格です。伊勢崎氏は口が重いというのでなく早口と発音が問題なので、訓練をうければすぐよくなるでしょう。
女性の声は通るし、廣瀬さんの話は分かりやすかったですね。小泉さんは姿勢が悪くて、横柄な印象を受ける。ディナーテーブルでの姿勢が悪いと育ちの悪さが指摘されますが、講壇での態度も同じ。教授ともなると誰も注意する人がないんでしょう。ある意味気の毒。
これらの欠点に日本人は寛容すぎます。私は欧米の真似をしろと言うつもりは毛頭なく、例えばスポーツ選手がガッツポーズなんかすると、西洋人の真似して何て下品なと腹が立つけれど、話術の不味さ(大江健三郎などノーベル賞受賞式ではさぞ笑い物になったはず)、姿勢や態度の悪さ、これは西洋人風にスマートになってほしい。だって、これらは聴衆へのマナーですぞ。まず聴き取れなきゃ、失礼じゃないですか。
伊勢崎さんのNATOの自分探しの話は、賛成ではないけど面白いと思いました。「自分探し」って特に女性間で一時はやった言葉で今はあまり聞かれませんが、もう少し高級に言うと「存在理由」ですね。レゾンデートルなんていうと嫌味か。
NATOの存在意義は欧州ではあまり問題にならないみたい。EUについてはその拡大や官僚主義を批判する人々がいる一方で(廣瀬さんも言うように、EU内で先進の独・仏・ベネルクスなどが持て余している国は多い)、NATOは大体みんながあっさり受け入れているのは、やはり安全保障に係わる問題で、欧州の人々には根深いロシア不信がありますから。
このロシア不信は日本人の想像を超えています。欧州のコングロマットAirbusの本社やフランス軍需品工場が南のトゥ―ルーズにあるのは、ロシアから一番遠いからです。
しかしフランスは天邪鬼こそが知性の印と思っている国なので、NATOへの加盟ではだいぶすったもんだがあり、加盟を先延ばしにしたり、かと思うと一部だけ入るという中途半端なことをしたり、まともにフルメンバーになったのはわりと最近のことじゃなかったっけ。それでも威張りくさっているのは「戦勝国」だから。戦後77年経ってまだ肩身の狭いドイツとは大違いです。結局欧州勢では英仏が上席に居座っていますが、アメリカあってのNATOだから、これら二か国は虎の威を借りているだけ。だがその虎がもはや昔の猛虎ではない。
NATOって面白くって、EU加盟国でないノルウェーやアイスランドがメンバーかと思うと、EU加盟国のスウェーデンとフィンランド(さらにアイルランドも)は不参加。彼らにも事情があってそちらの説得は難しいのか、近年は南の方にセールスの手を伸ばし、アルバニアだかモルダブだかバルカン半島で盛んに営業をしていますね。EUと違い金持ち国が貧乏国に援助金をばらまく必要があまりないので、ドイツでも特に反対する声はない(ピュアな共産主義の左翼党をのぞき)。
しかしスウェーデンは今回かなりNATOに協力的でした。これもロシアのウクライナ侵攻のおかげ、もしかしてもう一押しするとフィンランドなんかも正規メンバーになるかもしれません。ロシアがNATOに反対してやっていることは、結局のところ逆効果です。
逆効果というか、欧州のタカ派に今回の騒ぎはチャンスでもあって、軍備増強に突如目覚めたのがドイツです。この国はメルケルの疑似平和政策にすっかり幻惑され、2011年には国民皆懲役を廃止しました。その後も軍事費は削られる一方で、アフガニスタンにもNATO加盟国として軍隊を派遣していましたが、各国中もっともみすぼらしい軍備だったそうな。ヘリコプターの整備ができてなくて飛ばないということが何度もあったし、さび付いた戦車に苦闘したことも。(死者が出る前に撤退して、運がよかった。)
しかしそのみっともない体たらくも「平和ドイツ」の象徴としてマスコミが称え、GDPのせめて2%を軍事費にというアメリカからの要求も無視し続けて今日に至る…が、その今日には状況が急転し、向こう数年間で1千億ユーロを追加するそうです。13兆円くらいですか。「追加」ですから通常の数兆円に加えて向こう数年は毎年3兆くらい増やすらしい。
危機管理は欧米の方が優れているみたいなことを日本では言いますが、いやいや、現実の危機や脅威に直面しないとどの国でも事態は変わりません。経済面でのドイツの甘さも全く理解できない。ガス・天然資源へのロシア依存も目に余るものがあったと同時に、ロシアに投資したり熱心に株を買ったりというのも不可解。1997年のアジア通貨危機のあとロシアもルーブル危機に陥って、損害を被った人はドイツ人・ドイツ企業が一番多かった。ドイツの成金って、お金の使い方を知らないんですね。
(ここで話が飛びますが、2000年に起きたコンコルドの事故で死亡したのは、ほとんどが大金持ちドイツ人。フランスで造ったニューヨーク行きの航空機でドイツ人が死ぬ。なんだか象徴的だと思いました。ドイツ人って、ほんまはかなりアホや、と言いたくなる。)
地位協定の話が出ていましたが、従属的関係は米・独も似たようなものです。思いやり予算もズドーンと払っています。メルケルはオバマと仲良しになってその点も誤魔化しまくっていましたが、欧州軍の出撃機は全てフランクフルト近くの軍用飛行場からで、学生時代に三多摩にいた私はベトナム戦争時の立川基地を思い出す。RFA(赤軍)がどう喚いても、ドイツとしては戦勝国のいうことを聞かざるを得ない。悲しきものは敗軍。
ベトナム戦争が過去となっても、そのあとユーゴへの爆撃機もドイツからだったし、無論中東へも。もしロシアがポーランドやバルト三国を攻めてNATOの仲間を虐めたとなると、やはりドイツからの発進になるでしょう。米軍の病院もその近くにあるので、アフガニスタンやイラクからの戦傷者、さらに遺体もすべてドイツに運ばれていました。(遺体はもはや人ではないからと、貨物輸送機で運ばれてくるのが悲しい。)
日本の学者やジャーナリストは欧州の実態を見たと言ってもせいぜい1年かそこらの滞在で、米・独の協定やら覚書は目にも耳にもすることができないから、点がずいぶん甘いなあと思います。
アメリカがNATOから脱退ということはまずないですよ。だれがNATOで得するか、という話が出ていましたが、アメリカには戦争がどうしても必要なのです。軍事顧問も多いし、それ以前に軍需産業をなんとか維持しなくてはならないから。
冷戦時代はかなり甘い汁を吸っていた軍需産業では冷戦が終わって合併統合が進み、数は減ると同時に規模は拡大しました。ポイントは、戦争がないと作った戦闘機その他の装置の性能を試せないということです。1991年の湾岸戦争はその実験のチャンスで、そこで学んだ苦い教訓は友軍攻撃の問題でした。これfratricide(兄弟殺し)と呼ばれて、敵味方識別機能(FFI)の信頼性が低かったため、友軍をかなり撃ってしまった。その教訓はイラク戦争で見事に生かされ、誤射はほとんどなかったそうです。性能の試験にも改良の実証にも、実戦は不可欠です。
話は変わって、クリミア半島の併合でロシアは国際世論から攻撃され始め、特に欧州では非難ごうごうでしたが、ぼーっとしているあんたらが悪いねん、と私は思った。そのとき、ロシアが口実として、クリミアで住民投票をしたら大多数がロシアの領地であることを望んでいると言ったのですが、これって、そのだいぶ前からロシア人をどんどん送り込んで親露地帯にしていたのですよね。そこで住民投票すればロシア系が勝つのはあったりまえ。
と、欧州側は憤ったのです。でも私は欧州人じゃないから事態をもう少し公平に見られる。
なるほど、ロシアのやり方は汚い。だけどフォークランドはどうよ。英国からあんなに遠く離れた島を占領して、それを返せというアルゼンチンを武力で叩いて、そのあともアルゼンチンが返還を求めると、住民投票でほとんどのフォークランド島住民は英国への帰属を望むと言っている、と応酬した。そりゃそうでしょうよ、数十年の間にどんどん英国人を住まわせているんだもの。
欧州諸国もアメリカもそれを黙認しておいて、ロシアのクリミア半島でのやり方に文句を言えますか。フランスだって、南の島に海外県というやつがあるから、英国を責めることはできない。だいたい21世紀の今の世の中に海外県って、そりゃなんだ。(だいぶ前にタヒチの研修生から聞いたのですが、小学校では朝礼のときに生徒に「われわれの偉大な祖先ゴール人は・・・」という文を暗唱させるそうです。ゴール人、そうド・ゴールのゴールでケルト系民族、彼らこそはフランス人の偉大なる祖先だそうな。教育勅語とそう変わらない。それを南太平洋の島の学校で朗誦させるヨーロッパ人の神経を皆さんどう思われます?)
斯く論難して、私は夫の親族から冷たい目で見られました。別にアカデミックな研究などせずとも、ちょっと気をつけて観ていると、NATOにもEUにもこの種のごまかしや、もっとはっきり言うとペテンが山盛りであることは簡単に見てとれます。
ところでどなたかがプーチンは西ドイツのKGBで仕事をしてた、なんて言ってて、これは単なる言い間違いでしょうが、プーチンはスパイとしてザクセン州のドレスデンに長く住み、そこで次女が生まれています。長女はドイツで学齢に達したので、ドイツの学校に通いました。東独にはロシア人兵士も多くもちろんロシア人用の学校もあったのに、ですよ。そして娘はロシアに戻ってからもドイツ語のギムナジウム〈ハイスクール〉で学んだそうです。「スラブ人の栄光を再びロシアに」なんて言う割には、親はドイツかぶれじゃないですか。日本でちょっとハイソな家庭の子供がアメリカンスクールに行くようなものでしょう。
この種の偽善はドイツ社会民主党の特に女性に多い。国有・公立化を推進すべし、と言いながら、子供は授業料が異様に高い私立校に行かせる。さる北の州の知事さん、ベルリンで国会議員だったのですが社会民主党の前任知事が病気で引退して、その後釜にという声がかかって引っ越し、そこで子どもを私立に入れた。社会民主党にあるまじき、と非難されると「私立の方が自宅に近くて母親としては安心だから」と言い訳したけど、ナニ、私立校に近いところに越したんです。
やることは右派も左派も変わらない。でも左派は「平等」とか「庶民のために」を標語にしながらやることがブルジョワ的なので、私は右派よりもっと嫌い。所詮プーチンも貴族の生活を望む成り上がり者。子供をドイツ語学校に行かせる代わりに、母語のロシア語をしっかり学ばせるべきじゃないですか、ロシア人なら。家庭の事情があるったって、あんたは公人ですからね。
最後に日本で知る人が少ないと思われる事件を一つ。1月にロシアとウクライナとの間で緊張が高まっていたころ、インドで開かれたシンクタンクの会議に出席したドイツ海軍の中将(副提督)が爆弾発言をしたのです。こともあろうにプーチンの肩をもって、「プーチンが望むのはリスペクトである。リスペクトには金はかからない。プーチンにもっと敬意を払ってもよいのではないか」と言ったんですね。
さあ、ウクライナその他から非難が集中してドイツは大騒ぎ。中将さんは「私の不注意な発言でドイツ政府に迷惑をかけたので辞任する」とさっさと消えました。そんな軽率な人にはまったく見えなかった。カッコよい軍人さんだったし。私、これは確信犯だと思いますよ。プーチンだけを悪者にする世論に一石を投じたかったのでしょう。
あ、もう一つだけ、言わせて下さい。プーチンはクリミア併合の際に、ゴルバチョフ時代のベーカー国務長官の約束とやらを持ち出し、今後NATOの東進はないと言ったのに、と責めて自国の行為を正当化しましたけど、どの口がいうか、です。(プーチンをちょっと庇ってみたり、怒ったり、ああ忙しい。)
日ソ中立条約ってありましたよね。独ソ不可侵条約も。そんな条約が何の役に立ちましたか。狂ったスターリンの野望の前に、約束事など弊履のごとく打ち捨てられた。政治ってそんなもんです、お宅がそれを証明しとるやないですか、プーチンさん。
写真は辞任したシェーンバッハ中将。そんなにおかしな人には見えないのに。
今日本記者クラブの講演を聴いています。黙って聴いてるだけでもちょっと時間がかかるし(突っ込みどころ満載で)、コメントをまとめるのに時間が必要なので、それは2,3日後に。
それより、今、現時点でのニュース。昼の時間ですが、今日は曇りなのに、外は金色
の光に満ちている。本当に金色なんです。これ、サハラ砂漠から飛んで来た砂塵のためで、昨年にも経験しました。ドイツもですが、フランスも金色になります。
移民がすぐにやって来るはず、アフリカは近いのですね。写真は西南ドイツでいちばん砂塵がひどい場所です。我が家のあたりはこれほどではありません。