事実VS本能:橘玲著:文庫改訂版集英社文庫2020年11月刊
(図書館にリクエストした本を取りに行った時、隣にこの本を見てすぐにリクエストした本です、タチバナアキラ、たしか、歯切れの良い書き手、とだけ覚えてました)
裏表紙の触れ込み…
人は「本能」のせいで、「事実」を正しく判断することができない!? 日本人の3人に1人は日本語が読めない、男はなぜ不倫するのか、女は男より競争が得意、自民党は実はリベラルなどなど、身近だけど目を背けたくなる事実を徹底解説。さらに日用品の買い占め、自粛警察、他県ナンバー狩り……新型コロナに関するコラムも追加しました。高度化するこの知識社会の「不都合な真実」が全てわかる一冊!
引用以上
人間の長い進化過程において獲得されてきた能力が現代の社会には合わなくなってきているという観点からするとポピュリズムに傾く世界の状況も一応説明がつく…つまり知識社会に対する反乱だと(ほんとかや)
それぞれのファクト(事実)については後で例を述べるとしてもう一つの大事な視点がある。それは日本が先進国のふりをした身分性社会であるという指摘(255ページ)
に続き、、、「偏差値60」(上位20%)を平均とする社会、、と、項が立ててあり、、ちょっと長いですがお付き合いください…255〜256ページ
それなりに複雑な文章を理解するスキルを読解力のレベル4(P I A A C(ピアック)レベル下記※参照)以上とするならば、その割合は日本で22.6%、OECD平均で11.8%です。一定の水準以上の数的・論理的問題に対処できるスキルを数的思考力のレベル4以上とすれば、その割合は日本で18.8%、OECD平均で12.5%です。
それにもかかわらずわたしたちの社会は、だれでも専門的な文章を読み、論理的思考ができることを前提に成り立っています。なぜなら、知的スキルが低いという指摘は「頭が悪い」と同義になり、「差別」とみなされるから。
その結果、5人に1人(日本」から10人に1人「OECD平均)しかいない私的スキルの高い人を「平均」として世の中が動いていくことになります。…中略…
なぜこんなことになるかというと、日本の(というよりすべての先進国の)社会の中心にいるのが高学歴層で、無意識のうちに自分を基準とするために平均(一般的な国民像)が大きく歪むからでしょう。社会的にも経済的にももっとも恵まれた彼ら/彼女たちにとって、P I A A Cの読解力や数的思考力でレベル3以下のひとたちは存在しないも同然なのです。
…中略…
インターネットやSNSで不愉快な出来事が頻発しています。モンスター・ペアレントやモンスター・クライアントも同じでしょうが、感情的にこじれる原因の多くは、相手は理解していると思っても、こちらの意図がまったく伝わっていなかったということで説明できるかもしれません。
P I A A Cのデータが示すのは、「話せばわかる」「読んでもらえばわかる」というのはそもそも幻想ではないかと言う深刻な懸念です。民主制(デモクラシー)はすべての市民が政治的な主張を理解し、判断できることを当然のこととして成り立っているのですから。
これが、先進国を中心に現代社会を揺るがす「民主主義の危機」の本質なのでしょう。引用以上
※P I A A C(ピアック)は先進国の学習達達度調査(P I S Aピザ)の大人版で、16歳から65歳を対象として、仕事に必要な「読解力」「数的思考力」「ITを活用した問題解決能力(ITスキル)」を測定する国際調査です。OECD加盟の先進国を中心に、24カ国・地域の約15万7,000人を対象に2011年〜12年に実施されました。日本では国立教育政策研究所によって、「国際成人力調査」として2013年に測定結果の概要がまとめられています(234ページ)
その他にも興味深いと思ったものを少し載せておきます
※「差別」とは証拠によって合理的な説明ができないこと、、と項が立ててあって… 113〜114ページ
幼い子供にクレヨンと白い紙を渡して好きな絵を描かせると、女の子は赤、オレンジ、緑といった「暖かい色」で人物を描こうとし、男の子は黒や灰色といった「冷たい色」を使って、ぶつかろうとするロケット、別の車に衝突しようとする車などを描きなぐります。これは親や教師が「男の子らしい」あるいは「女の子らしい」絵を描くよう指導したからではなく、男と女では網膜と視神経に構造的なちがいがあり、色の使い方や描き方、描く対象の好みが分かれるからです。
幼児の遊びを観察すると、生後6ヶ月の時点でさえ、男児は集団での遊びを好み、女児は特定の相手とペアで遊ぼうとします。さらに、言語中枢とされる脳の左半球に卒中を起こした男性は言語性IQが平均で20%低下しますが、女性は9%しか低下しません。これは男性の脳の機能が細分化されていて、言語を使う際に右脳をほとんど利用しないのに対し、女性の脳では機能が広範囲に分布しており、言語のために脳の両方の半球を使っているからです。
こうした主張がどれも「差別」でないのは証拠(エビデンス)があるからです。逆にいえば、差別発言とは「合理的に説明できない(アカウンタブルでない)」主張のことです。
「男と女はちがう」と指摘することが差別になるわけではありません。問題は、個人の主観的な思い込みやアニメ業界の常識で、「女にはファンタジーは向かない」と決めつけたことにあります。
このことがわからないと、「差別」との批判を抑圧ととらえ、過剰に自己規制するか、感情的に反発するという不毛なことになってしまうのです。引用以上。
※男女差別ガラスの天井について126ページ
あらゆるゲームに共通するのは、「リスクをとらなければ勝利はない」ということです。男女の生理的な差を考えれば、競争社会の勝者に男性が多いのは「ガラスの天井」のせいではなく、リスクゲームへの参加者の数のちがいということになります。
しかし、競争にはもうひとつ、「負ければなにも得られない」という現実があります。リスクをとった勝者の背後には、敗者となって脱落していく膨大な数の男性がいます。彼らが社会の底辺にふきだまるようになったのが「格差社会」です。引用以上
今回のコロナ騒ぎが取り上げられています、引用します。
33 〜34ページ
※新型コロナ「クルーズ船」対策はすべて素人の思いつき?
これまで繰り返し指摘してきたことですが、日本の組織の特徴は「ジェネラリストを養成する」との名目で専門性を軽視し、結果として素人ばかりを生み出してきたことです。役所はその典型で、厚労省では2019年の統計不正問題で、統計の専門部署に初歩的な統計の知識を持つスタッフすらいないという驚くべき事実が白日の下にさらされました。
いったん「素人」が組織を支配するようになると、専門性は徹底的に忌避されるようになります。専門家に権限を持たせると自分になんの知識もないことが暴露され、「素人支配」が崩壊してしまうのですから。
このようにして、政府や厚労省の大混乱の背景が見えてきます。恐ろしいことに、新型コロナをめぐる一連の出来事は、「すべて素人が思いつきでやっている」と考えるとすっきり理解できるのです。
[註]2020年9月、厚労省内の「新型コロナウィルス感染症対策推進室」室長が事務次官に就任しました。案の定、国立大学法学部(学士)出身で、感染症はもちろん医学の基礎教育すら受けた経歴はなく、主に年金や社会保険を担当してきたようです。クルーズ船問題でいっさい表に出てこられなかった理由がわかります。引用以上
(話は変わりますが、、甥っ子の1人が高校生の時に3年間で100冊の本を読了することを課題として出されました…それにちなんでイモヅルシキも100冊まで取り上げさせていただきます、身の周りを見渡せば(狭いのですぐ見渡せる)目を通していない本が100冊ぐらいあります、イモヅルシキとは参りませんがこれを仕事にすればなんとなく達成感も味わえます、あはは。
まさか読書が日常になるとは思いませんでした。このイモヅルシキでなければ出会えなかった本もたくさんありました。たくさんのコメントもいただきました、引き続きびすこさんみなさんご存分にコメントくださいませ、たまには反論も、ま、お手柔らかに。
その後は僕のつまらない小説を載せるかもしれませんけど、たまにチラ見してやってくださいませ、よろしくお願いいたします、あー早いとこ年を越したい、賑やかを見るのはいいけど、「する」のはめんどくさい)
(あ、今思いつき… KBCのトークルームで俳句の真似事を始めたらもう1年間ぐらいやっていることになり、図らずも四季のつれづれの駄句、今まとめ始めたので、それをフォーラムで発表させてください、わーい、、句集、日々草だい、お邪魔虫😙)
図書館を今ほど利用している事はないです。欲しい本を頼めばすぐ東京中の図書館ネットワークから届くし、オススメ本も平積みになって紹介されています。新聞は読み放題ですし館内は静か、フリーマーケットのような小さいけれど毎日入れ替わっているリサイクルコーナーがある、毎日の散歩コースです。なんたって日当たりの悪い家に暮らしてますと、とにかく日に当たらなきゃいけないので自転車に乗らずどこへ行くんでも歩いています。そういう意味では日当たりの悪い家に感謝しています、とにかく外へ出る。自転車では素通りしてしまいますけど歩いているので目につく所立ち寄ることができます…東京再発見です(ちょっとオーバーかもしれませんけど実は実感です)コメント本当にありがとうございます♪