関東大震災:吉村昭著:文春文庫1977年8月刊
本所区陸軍被服廠跡で亡くなった数万人の惨状、流言飛語による朝鮮人の虐殺、伝染病の蔓延、ふん尿処理、死体処理の酸鼻を極める状況が克明に語られていく。さらに歴史の縦糸に横糸を編むようにして大杉栄、伊藤野枝、大杉の甥、橘宗一(6歳)が甘粕憲兵大尉らに殺害され、事後、いきさつが裁判官の厳しい追求により法廷であかされて、それを当時の人たちがどう受け取ったかもじわりと伝わってくる。震災の事前と事後の大森房吉、今村明恒の地震学者同士の確執も東日本大震災にダブる。数字をあげて順を追って説明されているだけのような描写と証言で当時の地獄絵図が立体的に浮かび上がってくる力作。
(この本もごーぎゃんさんの蔵書のうちの1冊でした。今日自由の庭で葛飾文芸クラブの例会と一緒に行われる本の交換展示会にイチオシ札をつけて展示させていただきます)
見ないと言う選択もあると思います。見なければよかった…と思ったことが僕もあります。遭遇してしまうことを避けることもできないのも事実だと思います。