ソクラテスの妻:佐藤愛子著:中公文庫: 1974年7月刊
出世作三篇の一。
(商売の質屋をたたみ、広い家を売り、借金を返し、長年いた番頭格の人も解雇、、、物語の最後新しい住まいへ引っ越すときの描写、この最後のパラグラフがそのまま物語のおしまいになっています、、)
70ページ
車はゆっくりと走り出し、四軒ほど先のお茶屋の角を曲がって行きました。車がお茶屋の角を曲がるとき、ソクラテスの背中がそれにつれて傾くのが見えました。それはほとんど車からはみ出さんばかりに大きく斜めに傾いておりました。
ソクラテスとは自分の夫のことです。(その夫は、、)
案山子(かがし)の会=得体の知れない文学かぶれが集って、小説を読み合ったり、雑誌を出したり、およそ非生産的な議論を戦わせしたりして日を送っているグループの名称なのです(以上9ページより引用)
夫婦喧嘩の最中ふと見ると寝ている子の固く閉じた目から涙がこぼれているのを見て、、その場を収めるシーン、女の目から見た男、一部始終を見られている男が短い文章できっちり輪郭をとられていました。
この本も今度の土曜日のKBCの例会のときの本の交換会に持って参ります。他の十数冊の本とともにお借りしてきた、ごーぎゃんさんの蔵書の一部でした。
(手抜きできない暮らしのこまごまの総指揮を取らざるを得ない女の怒りと悲しみが僕でもよく理解できました。旧タイプの男、かっこいいんだけど不器用、それをいくらかでも認める女がいてこそかろうじて成り立つ文脈か。こういう複雑系?は女性でなければコントロール不可能だと思いました(白旗を揚げます🙁女性に頼るそんな時代でもなくなっていますねきっと)、、けど、、男も女のように、複雑な文脈を理解するようにならないとだめな時代が来ているとは思っております)
あら、ソクラテスの妻の著者は佐藤愛子さんだったのですか?
佐藤愛子さんといえば、最近最後の本を出版しましたね、それも読みたいですが、
ソクラテスの妻もぜひ読んでみたいです。
待っていました。イモズルも勿論ですが、久々の登場に佐藤愛子さんを携えてというのが嬉しい。
この人のエッセイはかなりたくさん読みましたし、寡婦になってメソメソ嘆いてばかりの母を叱咤するつもりで、彼女にも読ませました。愛子さんは母より一歳下なので、今御年98歳。すごいですね、筆一本でここまで来て。
二番目の夫となる田畑麦彦という人に会ったとき、彼のズボンのお尻にアイロンの焦げ跡があり、そういうことを気にしない「男らしさ」が気に入った、それが運の尽きだったと書いていました。若い人にはよくある誤解。その後に待っていた戦場。まあ、それも今となれば・・・というところでしょう。