勝間和代の日本を変えよう:勝間和代著:毎日新聞社2008年9月第1刷
厚さ12ミリの机代わりのベニヤ板の両脇の図書館からもらってきた本の山に挟まれて読み始めました。14年前!の本です。スーツっぽいうわっぱりを羽織った彼女が上体を机の角に八の字おいた腕で支える姿が本の表紙です。Lean in :一歩前へ(※拙訳)という本を書いたシェリル・サンドバーグを思い出しました。例によってパラパラ読んでいくと西原理恵子との対談あたりから少しずつ面白くなってきて、読み終わる頃には後半に付箋がいくつもくっついてました。
彼女のブーム?中に書かれたうちの1冊です。印税の20%をもとに団体を立ち上げた記録が面白かったです。外資系企業を渡り歩き数字に強い日系アメリカ人みたいな先入観があり、タカビー(死語?)っぽい悪印象がありましたが…読み進めるに従って、我が下町的がらっぱちさもあって、楽しく読み終えました。付箋のついたところからいくつか引用いたします、。
(※勝間/西原、対談) 105〜109ページ
…司会者:お金なんかより大事なことがある、という人ほど、世の中のために具体的に何もできなかったりしますね。
勝間:だから、お金のタブー視というのをやめるというのが、1番の近道ではないかと、日本人にとっては、まず。
西原:よく、お金なんかいいじゃない、好きなことをすれば、って言うじゃない。若い子でそういうなめたことを言うやつがいるんですよ。ちょっと待てやコラァ、と。お金がないことがどういうことか知っているのかオラァ(笑)。
勝間:うちの子にも口を酸っぱくして言ってますけどね。「何々したい」って言うけど、「じゃあどうやって稼ぐの?」って。
… (※司会者)お子さんについてほしい仕事なんてありますか。
西原:何が好きな子とか、発見するのが大変ってことがありますよね。私は幸い、好きなこと(えを描くこと)があったからいいけど、ない人が一生涯する仕事を決めるのって、すごく難しいことだと思うんですよ。子供にそうゆう好きなことができるのか、好きだったらそれをやらせるでいいのか、好きなことがないと言われればどう教育すればいいのかとか、その辺が親としてさっぱりわからないところですね。
勝間:私は結構、単純に考えてまして。公序良俗に反しない限り、相手が自分を必要としていてもうかる仕事をすればいい。
西原:相手に必要とされる…。
勝間:自分を必要とするところに順番に行くと、いつの間にか自分が必要とされるところにだんだんだんだん上手に上っていく感じがしているんですよ。
… (※司会者司会者)…でもどこまで行っても自分が必要とされなかったらどうするんですか。
勝間:それは自分で見つけるんじゃないですか、どこだったら自分を生かせるか。
西原:うーん。私は、いやな仕事ほどお金が高くて、ラクな仕事ほどお金は安いとしたら、その真ん中で見つけてみたら、って言ったんですけど。あと、マッサージ師さんとか、看護師さんとかみたいに、人から「ありがとう」と言われる仕事、そういう仕事に就いてほしいなと思いますよね。
… (※司会者)仕事の前には、お勉強が必要ってことがある。この点、お二人のイメージは対照的ですね。西原さんは、勉強が苦手、ダメダメと言うイメージがあり…。
西原:はい、実際ダメです。
(※司会者)…勝間さんは勉強大好き、大得意といいますか。これも先ほど挙げた三浦展さんの本にあったのですが、今の若い女性の特徴は、勉強好きなほど「女に生まれてよかった」「将来に希望がある」と思えるところらしい。男の子以上に。
西原:あー、私は勉強嫌いだから将来に希望がないですよ(笑)。だから稼ぐ(笑)。ちょっとでもためとかなきゃって、とか思って。
… (※司会者)たぶん勝間さんの本を読まれる方は勉強が好きな方なんでしょうけど。勉強が嫌い、苦手という人はどうすればいいんでしょう。
勝間:成功体験しかないと思うんですけどね。何か1つでも2つでもいいから、勉強したらいいことがあった、またいいことがあると。だから、勉強するとうれしくなるし、ドーパミンなんかも出るようにすればいいですよ。以下略。
122〜123ページ
空気の差別(※男女差別)
まず必要なのは、正しい現状認識です。
男性は女性を差別している面がある。女性は差別されている面がある。女性差別があるのでこれを撤廃しようということが本当のメッセージなのであって、「男女共同参画」などは、どう考えてもきれいすぎる言葉です。
私たちは「男女平等」という教育を受けてきたにもかかわらず、現実はちっとも男女平等ではないのです。女性は、女性であるというだけで、制度面で自分が「ニ流市民」として取り扱われていることを、はっきりと認識すべきです。
私がそのことに気づいたのは、すでに小学6年生の時です。当時は男女雇用機会均等法施行前でしたが、神童とまではいわれた私の11学年離れた姉が、慶應義塾大学経済学部を卒業していても、たいした就職先がなかったのを見たのです。姉は結局、ある会社の一般職として働き始めましたが、その仕事でさえ、5、6年後には結婚退職を勧告されました。もう1人の姉もまったく同じ状況でした。私が大学在学中に資格(公認会計士)を取ることに決めたのも、もちろんこの経験が影響しています。
そして男性は、無意識のうちに女性を差別している。空気のような差別です。これまで受けた教育と社会の仕組みとシステムのなかで、無意識的に行動していることが、結果として女性差別になっているのです。引用以上。
(※ここの指摘は結構重要なことを言っていると思いました)
第4章 雨宮処凛(あまみやかりん)さんと、脱・ワーキングプア対談) 205 〜208ページ
まずは知らしめること
勝間:最後にもう一度、若年雇用の問題に戻りますと、やはりエスタブリッシュ側とフリーター側が対立構図のままだと話が進まないと思うんですよ。どうしたらもっと両者が会話できるような仕組みができるのか。
雨宮:会話…そうですね、フリーター側の人も、呼んでくれればどこでも行きたいし、理解してほしいという人は多いので、声をかけてくれれば、。そこへ行って説教されなければいいんですけどね(笑)。精神論ではなくて、具体的なシステムの話、制度設計の話をしたいというのがこちら側の要求なので。
勝間:具体的には均等待遇であるとか、最低基準の引き上げですとか、制度設計の話でほかにどんなものがあるでしょう。たとえば労働基準法の徹底遵守みたいなものありますね。
雨宮:違法行為が当たり前にされているだけでなく、今はもう命にかかわるような現実があります。例えば工場で、鉛を使う仕事をしていて、血の中の鉛の濃度が高まっちゃう。同じ作業場で働いている正社員だけが特殊な健康診断を受けられて、派遣と請負は健康診断の通知すらこなかった、ということがありました。結局、健康診断の結果、正社員はすごい鉛濃度が高まっているとかでその工程外されたんですけど、派遣と請負はそのまま。こんな仕事はこいつにやらせておけばいいんだ、みたいな。ほかにも、スタンガンで脅されるだとか、アスベストが舞うところで派遣だけが風邪用のマスク1枚で作業させられるとか、そういう本当に命に関わることもかなり多いですよ。
… (司会者)やっぱり、そういう現場を人々が知らないということがあると思うんです。
勝間:本当に、みんな人が悪いというよりは、単純に知らないだけだと思うんですよね。
雨宮:それはありますよ、悪気なく知らなかったんだということは、すごくいろいろな人と話していて感じますね。
勝間:雨宮さんは書籍などで情報を伝えてくれていますが、もう少しまとまった形でリリースなりなんなりで出せませんか。各会社にこういうことでこういう違法行為がありますよと。それをメディアにばらまくだけでもずいぶん違うと思うんですよ、違法行為と企業行為をはっきりと。そうするとものすごい脅し効果になると思うんですが。
雨宮:そうですね。
勝間:定期的に。それからWebで
開示して。それをキー局で見えますし。
雨宮:これはもう、各企業、ビビりまくりですね。
勝間:実名も含めて全部入れていけば。それは派遣会社も含めて、実際に違法行為の事例をつくってしまうと。
雨宮:それはぜひやりたいですね。いまはそれをけっこうバラバラにやっている状態なので、いろんな小さな組合が。ここでこんなことがあったとか、こういう労災が隠されていたとか。やっぱり1つにどっかまとめてバーッとマスコミとかに流すだけで、ぜんぜん影響力違いますよね。
勝間:事例集とデータベースをつくるだけでずいぶん違うと思います。そうすれば定期的に労基の人も見にいくでしょうから。何か困った時は、そこへ投稿してくれという形で。
雨宮:そうですね。若い層にしたら、本当、自分の生死がかかっているので、けっこうブラック企業リストみたいな、そういうのは、この日雇いは危ないとか、この派遣は危ないとか、そういう情報はすごく口コミで回ってきますし。
そういうところで逆に、若い人はすごい勉強しているし、不買運動みたいなものもやろうというような話にもなっています。ぜひ、違法行為をしている大企業を脅すためにいいたいですね。
勝間:不買運動もやってみると効果がありますよね。
雨宮:そうですね。
勝間:でも、不買運動だらけになりそうで、そうなっちゃうと困っちゃう(笑)。
雨宮:本当に。買うものがなくなるかも(笑)
勝間:そうやって知らしめることと、あと、行政評価をやるといいんですけどね。皆さんの視点からちゃんと貧困対策をやっている行政機関はどこで、ひどいところはどこだと。公共投資型の公共投資とかの行政評価をやっているところがあるんですけど、貧困対策の行政評価ってあまり聞かないので。
雨宮:それもいいですね。マスコミに関してはやっているんですけどね。貧困について素晴らしいことをやったマスコミには賞をあげるとたりとかして。ひどい報道したところは徹底的にバッシングするみたいな。以下略、引用以上。
お金が無いことの意味を知るのは重要ですね。でもそれをどう教えればいいのでしょう。身近な人でお金にものすごく煩い人間と、わりとなんとかなると楽に考えている人がいて、後者が金銭的に余裕があるというわけではないのも面白いと思います。そういう人とはお付き合いが楽で、他の人もそう感じているらしく、結構友達が多く日常の暮らしもリッチじゃないけど余裕があるように見えます。
私自身はいくつか障害があって普通の主婦の人生は無理と両親から思われていたので、教訓の第一は「親・兄弟に決して迷惑をかけないこと、自力で生きること」でした。だから稼ぐことは生きることの第一条件でしたけど、その割にはケチにならずに済みました。自分では悲観的な人間と思っているのに、根本には楽観主義があるのかもしれません。いや、もう居直っているというべきか。男女差別も自分の家庭に始まって山ほどあった中で、まあ、なんとか乗り越えて、というより「いなして」来たのも、その楽観主義のせい?
家族にも親戚もに、ケチというか金銭を貯めることが何よりの関心事というケースがかなりあって、どうも彼らは人生にひどい不安を感じているようです。その不安がどこから来るのか分かりません。だって物質的には私なんかよりずっと安定しているのに、どうして、お金が出て行くと自分の人生がダメージを受けると考えるのでしょう。
結論:お金はもちろん大切で、決して馬鹿にしてはいけませんが、ある程度あれば大体なんとかなるので(隣の人より貯金が100万円少ないから悲しい人生を送るというわけじゃない)、それをちょっとでも減らさないよう必死になるというのは、実に馬鹿げています。