< 男 >
柳美里著:新潮文庫: 2014年7月刊
窓辺で本を読む…侘び住まいにしては良い条件が得られた。つい1週間ぐらい前に窓を開け放ったらこういう状況であったことに気がつきました。
空を見上げたり横丁覗いたりしながら本に目を落とす。
この本の目次がふるってる(この理由をここで書いちゃうとこの本の構成の種明かしをしていることになってしまうのでこの本をお読みになる方のために説明は致しません)
目、耳、爪、尻、唇、肩、腕、、、と項が立ててある。
「耳」の項の文章の中に…「ねぇ、君は自分の血が、流れる音を聞いたことがある?」(20ページ)
この文章読んで、僕はアッと思った🤭。先日来続いている僕の耳鳴りは血の流れる音かもしれないなと思いました。
この作者に初めて出会いましたがこの一節で、ゆっくり本に付き合う気になりました。
(兄から電話…今ねー8チャンネルでねー小説の書き方の番組やってるよ…(本を中断してテレビのリモコンでテレビをつける、番組名はタイプライターズ?…ハードボイルド作家の大沢在昌が出ていて、、、小説はねぇタイトルで決まるの…タイトルが決まって小説が書けるの…なんて意味のことを言っていた、、。
同じ番組に54字小説、いうのが紹介されました。スマホの画面に納まる小説と言う意味らしい…小学生の作という…うまく思い出せるかなぁ…「お客さまようトイレのドアを開けて入ったら中は広いうえに奥が深くて、、、」なんて筋書きだったと思う…つまり「お客彷徨うトイレ」、、、これは座布団1枚ですね。読書に戻ろう。
唇…の項で玄人筋の女性は体を許しても唇をなかなか許さない…みたいな語りがなされていました。僕の若い頃、22、23才?の話です。玄人筋の接客業の女性でキスの上手い人がいました。女性経験が少ない僕ですが人に話して聞かせて差し上げたい位です。その…なんです…突然唇を奪われて?!…そのフレンチキスが唐突かつ男性的に絡み付いてきたもんですから…したたかに酔ってはいましたが…そのキスたるや、もう一度してくれたら結婚しても良いとへべれけになっていた僕でも一瞬思ったほどでした、、、。はい、半分冗談でした🤭
さて、次行きます。問題は…「指」の項です。男は指かな、みたいな前置きがあって…幼児期における著者のショッキングな報告が続きます。成人してからの男の指の感触も小説仕立てで語られます。男女の営みをみっちり淡々と、それでいて官能小説と、一線を画すためか、わざと平凡な漢語を使ったなと思う文章?でもありました。こんなふうに難癖つけないと読んでいてなんとなく面白くないのは、この著者の非凡に対する男のやきもちかなぁと…僕も意外と心が狭いなぁとも思いました…続けます。
、、脚、、手、、声、と続く、声。うーん、おばあちゃんの声…覚えてる、父母の声覚えてる…姉兄の声覚えてる。当たり前。聞いたことない人の声…適当に自分で作ってる。声は絵の輪郭線のような役目かな?そんなはっきりしたものでは無いかもしれないけれど…落ち着かないので…やっぱり適当な声を自分で作っている。この本の著者の声を聞いた事はないが何となく想像がつく。声に惚れた事は?ま、いいや。本の最後は「背中」でした。あなた自分の背中に油断はありませんか?そう問いかけたくなる最終項でした。名前は聞いたことはあったけれどいろいろスキャンダラスに取り沙汰された作者であることを最後の解説を読んで初めて知りました、この作品を最初に読んでよかったです。読もうと思っていた「女学生の友」はしばらく寝かせておくことにいたします。
柳美里という名前は一時よく聞きました。もう30年ほども昔だから、今はいいお年なのでしょう。
血の流れる音かどうか分かりませんけど、キーンという音ではなく、ザックザックという音がすることがあります。何でしょうね。血であれば、それもいいかな。7,8年前からで、その間に脳の検査もしたけれど異常はなかったので。
声ってすごく大事な要素。ある程度体格に関係があるのか、特に女性の場合体の細い人は声も細くて高めのような気がします。男性ではどんなに外見がよくても、インテリでも、声が薄っぺらいと人柄もチャラい気がしてがっかり。俳優より声優に魅力を感じます。前にひょこむで書いたことがありますが、私、金内吉男が読んでいるという理由で「歎異抄」のCDを買って毎晩聞いていました。(子守歌の代わりにもなったけど。)あと、蟹江敬三が埴雄高の「死霊」を朗読するのを教育テレビで聞いて、すごいなと思いました。やっぱ、男は外見じゃないのよね。舞台俳優はしっかり訓練されているからということもあるのでしょう。