植物図鑑:有川浩著:幻冬舎文庫2013年1月初版
100円の特価本コーナーから題名に惹かれて中身も確認せず入手したものと思う。表紙をめくると、タンポポ、ノビル、フキノトウ、スミレ、ワラビ、ノイチゴなど僕でもかろうじて知っている植物の写真が出ている。後は400ページぐらい文字ばかりだ。あてが外れた…小説なんだ。それもちょっと甘い感じの。甘いものは太るので制限している僕としてはちょっと抵抗がある、冗談です。でも100円分取り返す。我慢して読み始めて…野草クラブにこの本を紹介することを決めた。軽い感じが今風な恋愛小説っぽい。面白い、うんちくが。植物のうんちくが、植物名をタイトルにしたそれぞれの項と物語の進行がシンクロしているので僕でも無理なく頭に入る、著者の作戦勝ち。ありゃ、高知県の人だ。牧野富太郎も1本とられたと苦笑いしそうな植物図鑑。途中で口絵の写真と文章を見比べるために僕は虫眼鏡を取り出した…僕みたいな植物音痴?の素人を誘導する語り口からしてこの著者ただ者じゃない、甘いワナ(女が男を拾う逆バージョンの小説の展開)は素直に若い女性になった気で(どんな気?)悪ノリで、一気読み。道端で見つけた草が料理次第(つまり書きっぷり)でこんなに(小説が面白く)美味しくなるのだというお手本でした。(我ながら比喩、下手ですねー😅)
主人公の2人が野草摘みに行く。収穫した草花を料理する場面。
たんぽぽの花と葉は天ぷら、そして茎は?
…139ページで…
「バターで炒めてみました。洋風に処理できる貴重な野草なんだよな」
とイツキ(男の名)に言わせています。
(この時点でもう100円のもとをとってお釣りたっぷりいただき大満足。野草クラブの皆さんにも読書をお勧めしておこう!)
(パラパラと後のページをめくりこんな一節を拾う、出会った農家のおじさんからピーマンをもらって…ピーマンを湯がいて食べる方法を教わるところ…
330〜331ページ
「ピーマン湯がくんですか!?」
驚いたさやかの反応は思う壺だったらしい。オジサンはますます嬉しそうな顔になった。
「さっとだぞ。湯がきすぎるとクタクタになっちまうからな。そんで水に取ってぎゅっと搾って、ごま和えにするんだ。白ごまでも黒ごまでもいい」
「そんな食べ方初めて聞きました」…中略…「早速作ってみます!」
引用以上。
…僕ももちろん作ってみることにします。
(女性の著者が書いたこの本、女性以外にも乙女心を学ぶために若い男性も読んで欲しい。仕事で若い男性たちに囲まれている時、連中が引っ掛ける、じゃなくて女性ととっかかりをつけるために いろいろ工夫してたことを思い出したのです、じじい余計なお世話あはは🤣)
へーご近所にこんなにサラダ、じゃなくってたんぽぽの絨毯! お天気にかかわらず色々な表情を見せてくれそうな野原、ですね。 救荒植物一覧…飢饉や天災が生命を脅かした歴史感じます、勉強になりましたありがとうございます♪
タンポポ、私は3月にアルザスのさるレストランで食べることにしています。サラダです。その時期を過ぎるとタンポポの茎が固くなって食べられません。サラダに出てくるタンポポは新芽なので色は無色に近い。タンポポのことをフランス語でpissenlitと言って、これはオシッコのベッドという意味。要するに夜尿ですね。タンポポには利尿作用があるんですって、でも科学的根拠はなさそう。タンポポ食べてトイレに通う回数が増えたことないもの。
写真は目下の近所の風景。タンポポで真黄色になっています。近くにはキンポウゲで黄色くなった野原もありますが、この科の花は有毒です。最も危険なのがトリカブト。
日本には救荒植物というのがあるでしょう。これは「飢饉、戦争その他で食料が不足した時に、その不足を凌ぐために間に合わせに食料(救荒食)として利用される植物である」と説明されています。先の戦争(WWIIです、もちろん)のとき、私の田舎でもいろいろ試したみたいですよ。
飢饉に弱いのは東北地方なので(サムサノナツってよくあったらしい)、米沢藩なんかは「かてもの(糧物?)」と呼ばれるこの種の植物についてしっかり研究させていたとのこと。山形出身の斎藤茂吉がそれについて書いているので知りました。
次のようなリンクがあります。上杉家の殿様は尊敬に値しますね。
飯粮集 かてもの 現代植物学考(石栗正人)
市立米沢図書館蔵書 かてもの飯粮集
米澤藩刊行の救荒書 「かてもの」をたずねる(高垣順子)
論文『飯粮集』と『かてもの』(高垣順子)
かてもの (wikipedia)
かてもの(最上川を中心に環境を考えよう)
置賜地方の山菜(最上川を中心に環境を考えよう)