8月11日(金) やや曇り予報
写真が語る銃後の暮らし/太平洋戦争研究会:ちくま新書2023年6月第1刷発行
まさに写真に語らせています。豊富な写真と、その背景に潜む時代の流れをわかりやすい解説を加えることで、歴史の実相を浮かび上がらせた力作。
僕がこの時代に生きていたとしたらおそらく日本の状況を鼓舞する新聞や報道の煽りをまともに食っていたと思います。深読みしようにもデータ不足と分析力不足で辻褄のつく憶測に流されそうです。
本を通読して閉じる時、時々知らぬ間に息を詰めて読んでいたらしく長嘆息。軍部の集団力学、国民へのプロパガンダ、希望的観測の儚さ、、負け戦とわかったときの収拾の仕方、、圧倒的暴力の前に抑圧される人間の弱さは、一人ひとりの人間の弱さと観念しました。
若い時僕の上司だった、戦争中戦闘機の設計に携わっていた方が…社員教育のつもりで僕に失敗談を開陳していた時、ふと漏らした言葉が忘れられません…戦時中の大本営批判をした後、、僕だったらもっとうまくやる、、聞いた僕は戸惑うばかり、でした。インテリと言われている人たちの正体見たり一兵卒、の心境だったのかもしれません。
(クレマチスさんが本との出会いも人の出会いと同じだとおっしゃっていたことを思い出しました。KBCのグループLINEでkeitaさんが紹介してくださった本つながりでこの本に出会えました。写真には写ってこなかった部分をも、写真から類推することの大切さも理解できました。文章の行間を読む行為と同じだと思いました。写真は貴重な共有財産ですね)
戦時中に特に女性に好まれた「愛国の花」という歌があります。朝ドラにもなった古関裕二の作曲。その二番の歌詞は
老いたる若きもろともに
国難しのぐ冬の梅
か弱い力よく合わせ
銃後にはげむ凛々しさは
ゆかしく匂う国の花
こんな歌詞に騙されて、250万人の日本人の命が奪われたと思うと怒りがこみ上げますが、曲は三拍子でとてもきれい。気がつくと私もよく口ずさんでいます。
国難、日本にもいつ起きるかしれませんね。