誠実
あっという間に読み終わりました。
前作の自分史を読んだ時、子供の頃の楽しい思い出を読みながらホンワカとしたどこにでもある葛飾の庶民の暮らしが見えるようで、幸せな人生を歩んでこられたんだな~と思っていましたが、今回は50歳を過ぎた内田さんの後半生の物語はかなりいろいろご苦労があったようです。
タクシードライバーの世界へ入られて15年間にありとあらゆるお客に対し、全編を通して内田さんの生きる姿勢(正直で誠実な)が貫かれており、いろんなお客がいたけどそのたびに自分の生き方を守ってやり切った満足感で終えられたのは一番大事な事だな~と思いました。
読後感に清々しいものを感じるのはそれがあるからだと思います。
後半に行くほどエピソードは面白くなり、お客の言ったセリフも思わずアハハと笑えたり、嫌なお客もいるけど、ドライバーを気遣ってくれる有難いお客もいて、それは内田ドライバーへの信頼感の表れですね。
ソープランド嬢のお客への本音のセリフに同感したり、その彼女が下りる時
ペロッとスカートをめくり、「これサービス!」と言いながら降りたのは面白かった。
とにかく、とてもとても面白い本でした、ありがとうございます。
SNSでも感想を書きました。
そうか、タクシードライバーって本当に多種多様な人と接する職業だから(たまには危険も伴う)、小説やエッセイの材料はたくさんあるわけだ。
佐藤愛子さんのエッセイにはタクシーの運転手さんとの会話がよく出て来ますね。この人は作家だから、話を引き出すのが上手なのかもしれない。私の友人で今は70を越えましたがそれでも注文があれば通訳や講師の仕事をしている人がいて、足が悪くて独りで遠出は無理だけれど、仕事の行き帰りにタクシーの運転手さんとする会話で世間の空気を体感しているらしく、政治経済の話題をメールに書いてきます。生きた社会の情報源なのですね。
ソープランド嬢の話、幸田文の随筆を思い出しました。昔まだ植木市というのがあった頃、植木屋さんから聞いた話として、芸者さんらしい玄人っぽい美女が買いに来て「手を握らせてあげるから、2、3割まけて」と言ったんですった。幸田さんが「まあ、それで、まけてあげたの?」と植木屋のおじさんに訊いたら、アハハと笑って質問には答えなかったそうですけど