10月21日(土)
兄との会見、病院との打ち合わせは2時間足らずなのにどっと疲れました。兄がこれ以上リハビリセンターに長居は無用、行き届いた上げ膳据え膳、体の管理、他人任せでは、ここだけの話…廃用症候群が加速する。
廃用症候群、、使えるものは徹底的に使う…自分の体のことです。中古品は使っている限り動く。2 、3日使わないとたちまちダウン。人間は生きている限り動いていなければならない。1週間も寝たままでいれば大きなこぶしほどある心筋は半分に萎縮する。
50年も暮らした家とバイバイするのは誰だって辛い。どこそこの通帳を持ってきてくれ、鍵はお前に預けてあるはずだ、よく探してみて、、どこそこの支払いが心配で心配で…と、ないかもしれない心配を過度に心配する一方で、兄らしく振る舞おうとする兄を見ていて胸が詰まる。
あれもこれも僕のせいにしてとりあえず謝って… (何謝っているのか僕もわからない)とにかく感情面に訴えて安心させる。
若草色の発色の良いキルティングのお気に入りの上着を兄の家からもっていく、ティッシュペーパー、マスク、チューブ入り歯磨き粉、スマホの充電器などを置いてくる、龍角散のどあめ、100円ショップで買った手鏡。
兄とは別室で3人のリハビリ担当者から担当別に説明を受ける、、リハビリに使っている器具の説明、口腔ケアの説明、体の部位に関するリハビリの進捗状況、、こちらは肝心なことだけ確認する…車いすから便器への移動は手すりがあればできるとの事。出張リハビリもできることを確認。
真っ黒なヒゲボーボー(兄は82になるのに髪の毛も真っ黒、末梢神経まで血の巡りが良い、長生き間違いなし)、別れてから…電動カミソリいつ買うかなぁなどと帰路の道々考える。
京浜東北線の車中が空いていたので、スマホの音声入力で甥っ子たちに経過報告。途中に家族LINEで、兄がなくなった義姉の13回忌のこと音声入力で…どうすっかなー、、と入る(いつ思い出して言い出すか、僕は気にしていました)、、こういう供養は日延べしても問題は無いことをお寺さんに確認したよ、と安心させる、すぐに対応することが不安を募らせないコツ。
四つ木の家の近くのいつもの海鮮丼を、いつもより40円引きの500円で買い(10日20日30日は割引)小ぶりの湯飲みに日本酒をつぎ、熱めに燗して、海鮮丼のネタを肴にとりあえず2杯飲む。今後の段取りを甥っ子たちに確認し…仕上げの3杯目を飲んで…人間の思考力なんて(僕だけかもしれないけれど…)あっという間に麻痺してしまうことを感じどっと疲れる。兄の最後の抵抗か…。こちらの抵抗でもある。
(昨日の予定では…小説は…亜紀が世間の目くらましのために、アメリカに渡り(そんな金どこにある?!、、森山祥太郎は陶器専門古物商としてうまい具合に大成功している、亜紀がいた日本の女子美術大学に多額の寄付をするほどに…)
いかにも小説っぽく、お互い初体験でできちゃった子を出産し、一緒に渡米した祥太郎の後添いの順子に子育てを丸投げ、亜紀は、英語が達者な順子の手配でボストンあたりの英国風が残る大学の心理学教室に潜り込む、というか入学する。
潜り込んだ先で持ち前の機転で頭角を現し、プロフェッサーたちの受けもよくアシスタントプロフェッサー(アフロアメリカン)とも「好い仲」に持ち込む、、亜紀の本領発揮のシーン、いうかワンカット、開陳してみたいと思っていたのですが、沈没です。
来週の火曜日午前中に兄がいるリハビリセンターのリハビリ担当の責任者と電話で話をすることになっています。僕にまだ体力が残っていてよかったなぁとそれだけが感謝です…身体髪膚これを父母に受く、、ありがとうございます❣️
今朝も、5時起床で一仕事終えて(土曜日の午前中はメンテナンスの人たちが来る)上がってきた夫が、紅茶入れてジャムやヨーグルトや果物を並べてパン切って、「朝ごはん出来たよ」というので、「どっこらしょ」と言いながらベッドを出て、ああ、こうやって動けるうちはいいけど、そのうち体を支えて起こしてもらうようになるんじゃないか、などと思ったどうしようもない「家内」です。
起きてしまえばまともなんですけど、子供の頃から朝が弱いのと、低血圧ぎみなのとで、午前中は介護レベル0.2くらい。あ、言っておきますが昼食はまともに作りますよ。週日は普通(以上)に仕事をしている夫のために、昭和の日本の夕食くらいのものを出します。昨日はホーコーロまがいの中華風、数日前に焼いたローストポークの豚肉の残りとキャベツが余っていたので。でもそれはあまり評価されない。相手はとにかくドイツ風体型になるのを一番怖れているため、サラダだけでいい、スープとパンでもいい、などと言う。出されれば食べるから(食べ物を残すなんて冒涜だった時代に子供時代を過ごしたから)、出さないでくれ、などという。だけど、グータラ主婦の唯一のレゾンデートルは「まともなものを亭主に食べさせること」なのと、料理で頭(体も少し)使わなくなったら、こぶしほどもない脳みそが完全に萎縮する、と思うので当方の都合で続けています。
日本では何でもお手軽に料理できるように、おでんの素とか麻婆豆腐の素とか売っていますが、そういうものはないので、すべて全部初めから手作りせざるを得ない。それもある意味、なけなしの脳みそを使うのに幸運な状況かもしれません。
いちまるさん、脳も心臓も四肢も、まだ相当長く使えますよ。精進のたまもの、そしてお母様が上手に生んで下さったおかげ。今の大変な境遇も、いちまるさんの能力を損じないように、という天の配剤かも。え?他人事だと思って?いや他人事だから客観的な評価ができるんですよ。
家族の中で一番弱かった私がこうしていられるのも大いなる全能者のおかげ。でも、いつ逆転があるか分からない。人間万事塞翁が馬、この先どんな罠が待っているか知れない。そう思って、半ば薄氷を踏むような思いで暮らしています。大きな顔してソファに張り付いているこのチビ日本人バアサンから、そんな思いは見てとれないかもしれませんが。