2月の読書会では、自由の庭で「1/4の奇跡」を大きなスクリーンでメンバーとともに鑑賞することができました。映画で世界を繋ぐARIGATOU MOVIEMENT にふさわしい感動的な映画でした。
他の2本も生命の深遠さと人との出会い、人知を超えた奇跡の存在を描いた名作ですが、会場では上映できませんでした。次のリンクから各自家庭のパソコンでご鑑賞ください。
リンクをクリックしてウェブサイトに入ったら、下までスクロールして作品を選択したら、言語を選択(字幕日本語がおすすめ)、視聴パスワードを入力すればOKです。
映画「4分の1の奇跡」の配信、ありがとうございました。
ろれちゃんがひょこむのブログに感想を書いたところ、ちょっと懐疑的なコメントがあって意外ではありましたが、昨今の風潮からみて分かる部分もありました。今の世の中「弱者が困難を克服」した物語は巷にあふれており、どうも「感動」の押しつけがひどくて食傷気味だったからです。
それで私もちょっと斜めに構えて観始めたのですが、大ちゃんという自閉症の子が登場したときにはっとしました。この男の子が、「ある」ということについて言った「あるものはみんな大切なんや」という言葉、これは通常、人がながい人生を生きた果てに到達しできる境地ではないでしょうか。
いわば、深い思索、哲学的な述懐。それを子供が口にしたことに驚いたのです。
この映画の中に様々な才能を持った子供たちが出てきますが、その現象は限界はあるものの科学的に説明がつくようです。
例えば、サヴァン症候群。自閉症の子供の10%程度にとんでもない能力が見られるということで、その才能は数学の計算や音楽・語学などに発揮されるといいます。脳のある特定の部分に関係しているようです。疾走する車から一瞬見た景色をそのまま再現できる子供もいるとか。
そういえば、最近読んだ本の中にラスコーとアルタミラの洞窟の壁画に関して、これはサヴァン症候群の集団によるのではないかという説が述べられていました。これらの洞窟には動物は入れません。だから目の前にいる動物をモデルとして描いたものではないことは明らかです。
2万年から1万4千年前のヨーロッパのこの部分に住んでいた人類の祖先は、多分小さな集団を形成していたのだろうが、内部での通婚が続いてサヴァン症候群もしくはそれに似た症候を持つ人の遺伝子が集中した。その遺伝子を持つ人達が、野原で見た動物の姿を記憶だけに頼って再現したのではないか、というのです。
さて、こうした「症候群」とは別に、神童とか天才児と呼ばれる子供たちがいます。
これらの子供たちの能力は、一般に知能が平均以下とされるサヴァン症候群のそれと共通するものがあり、数学や物理学・天文学の分野でそれが発揮されることが多いようです。音楽や言語においても超人のような人はいますね。モーツァルトは幼少時からその才能を認められていましたし、ガウスやパスカルの子供時代の数学の才能についてもいろんなエピソードが残っています。
現代でもその種の神童が話題になることがあって、12歳で博士号を取得したとか、15歳で優れた物理学の論文を書いたなどというニュースが掲載されることもあります。
ただ、それらの神童についてほぼ一様にいえることは、彼らの天才は自然科学や数学、数学を用いた経済学、ある種の芸術の分野に限られていて、人文学や社会学などの分野で10歳の少年が世を驚かす論文を発表した、という話は聞いたことがありません。
15歳のマックス・ウェーバーや12歳のモムゼンはいなかったし、これからも輩出されないでしょう。学問にはどうしても人としての実経験が必須の分野というのがあって、歴史学などは万巻の書を読破しなければならない。哲学や思想に関しても同様で、きらめく才を駆使して一夜にして成し遂げられるものではないはずです。
それなのに大ちゃん、どうしてこの年齢で「そこにあるだけで心を動かす」「僕だってそこに『ある』」というような深い洞察を得ることができたのでしょう。解剖学者はこれを脳のどの部分の働きに帰するのでしょう。
なお、この映画で紹介されていた鎌状細胞貧血に関しては、ずっと以前にエコノミスト誌の科学技術欄で読んだことがあります。切り抜きを探したら、2005年の6月4日号でした。
この記事をとっておいたのは、鎌状細胞貧血のことよりも、そこで取り挙げられているユダヤ人特有の病気に興味を覚えたからでした。ユダヤ人に多い病気として乳がんや卵巣がんが知られていますが(ただし子宮頸がんは非常に少ない)、ほぼユダヤ人のみに見られる疾病もあり、テイ・サクス病、ゴーシェ病などが有名です。テイ・サクスは生まれて生き残れる期間が限られているため成人の間では見られませんが、ゴーシェ病に関しては、もっぱらこの病気を扱う病院がイスラエルにあって、そこの患者は学者・医師・弁護士・公認会計士・技師など知能レベルの高い人ばかりなのだそうです。それも道理で、ユダヤ人の中で特にIQの優れたアシュケナジムがこの病気の遺伝子を持っていると言います。
これも、常に他の民族から隔離された状態で結婚し子供を産んだ歴史によるものだと言われます。民族のレベルで実施された一種の優生学の実験ということになるが、それによって得た優秀な知能の代価がゴーシェ病という恐ろしい病だった、と記事にありました。
映画の中で言われていた意味とは少し違いますが、禍福一如という言葉を思わせます。