西村かずお
ここはニューヨークの貧民街、崩壊しかけた古いビルの一棟、そのニ階の一室である。酷暑で所々窓ガラスが割れ、部屋の中を熱風が吹き抜けている。この場所は暗黒街に巣食うギャング団には格好の隠れ場所なのである。どのギャング団も各々特徴を持っている。このニ階はブラック団の根城である。
或る時ブラック団のボスの計画で総勢五人、郊外の豪邸に住む三歳の女の子を誘拐し身代金を奪う計画が立てられた。それは幼児の家から五十mほど離れた美容院へ整髪へでた帰りに誘拐しようと。
その日、豪邸のお手伝いが幼児を美容院へ届け、又迎えに来ると帰っていった。そこでボスの子分の一人が整髪の終わりの頃美容院へ向かい、その店員に「私はお嬢さんの家のお抱え運転手、今日はお手伝いが多忙で私が代わりに迎えに来ました」と。店員は安心して幼児を預けました。男は幼児を車に乗せボスの待つビルへと連れて行きました。
ボスは早速幼児の家へ電話、幼児を無事に返すので身代金として100万ドル、もし警察に知らせたら娘の命はないと脅迫です。翌、早朝五時にこのビルのニ階へ金を持って来いと。
娘の父親は即刻承諾、翌、早朝、父親は後部座席に大型犬のシェパードニ頭を乗せビルに到着、父親はニ頭の大型犬を下ろすと「待て」と待機を命じました。父親は金庫を持ち階段を昇りました。部屋の奥には五人のブラック団です。ボスが女の子を引き寄せ父親は金庫を持ち前に進みでました。無事交換が済むと父親と女の子は階段を下りて行きます。途中父親は口笛を吹きニ階に居るブラック団を指差しニ頭の犬をけしかけました。ニ頭はブラック団に猛然と襲いかかり吠え咬みついています。ニ頭の内の一頭が金庫を奪いました。ブラック団は皆拳銃を放り投げ三階の空き部屋に逃げ込みました。父親はニヤリとほくそ笑みました。
真実はこのニューヨークの街を現実に牛耳っていたのは娘の父親だったのです。表向きは貧民街の人々に無償で食糧援助やバラック小屋ですが仮眠施設を提供、ニューヨークの街の善行の名士だったのです。ところが真実はすべての罪悪の根源、影でニューヨークの暗黒街を統率していたのです。ブラック団も元は父親の子分達、ところが五人の者達の働きにそれは僅かの報酬、それが不満で五人で仕返しをとブラック団を結成したのでした。
(特別寄稿、了、代:大村)
固い岩盤の上に成り立った街ですよね、男も女もコツコツとその上を靴音を立てて目標に向かってわき目も振らず歩くイメージと、意外と古い町並みが一旗揚げようと集まる人のエネルギーを吸収し独特の猥雑さを醸し出しているのでしょうか、生き残るには確かにエネルギーが入りそうですね!古い話で恐縮ですが…開高健が、若くて無名でそこそこ貧乏でニューヨークにいたいなんてきどったこと言ってましたよね。確か。僕は若くたって通用しそうもないからパス、言ってみただけ😅
私ニューヨークは通り過ぎた程度ですけど、貧民街とかギャングといえば、映画ゴッドファーザー(II?)が思い浮かびます。ロバート・デ・ニーロがマフィアの親分コルレオーニの若き日を演じてましたね。
日本の知り合いの女性、今84歳ですが「若かったらニューヨークに住みたい」とよく言っています。今からでもいいでしょう、というと、いや、あそこはエネルギーがいるから、とのことです。確かに・・・
物静かな語り口…野上弥生子のモーツアルトに関する童話を思い出しました。 日本円にして1億円の身代金を前にしても…犬に対して拳銃をぶっぱなさないブラック団の連中…カタギでもやってけると思いました。