暴力について 共和国の危機 : ハンナ・アーレント : 山田正行訳:みすず書房2000年12月第1刷発行
読み始めて目が回った。文章を読んでいて解読するのに時間がかかる。何とか読み取れたときはほっとするのですが…あんまり読みにくいので、日本語と英語の差なのかとも考えました、例えば関係詞で長い文章も簡単に(…)カッコで括れる入れ子構造の英語が有利、とか。偉そうにそんなことを思ったのは…しゃべる方はともかく読む方は適当な読み方をするので結構英語の本を読んでいるせいかもしれません、もともとは翻訳がないので仕方なくですけど。ま、この年になってはそんなことどうでもよく、僕の英語の理解力より翻訳の方がもちろん正確ですし頭に入らないのはそのまま、読み進めました。そんな中でも少しはわかりやすい?文章がこの本の最後に書いてありましたので引用しておきます。引用文中※部分は僕がつけました。
174〜175ページ
…前略…
科学において、これはおそらく現代科学へのアメリカの顕著な貢献であろうが、チームワークが非常に効果的であるために、我々は月旅行を普通の週末のちょっとした旅行よりも危険性の少ないものにするほどの正確さをもって、複雑きわまる過程を制御することができる。しかし、いわれるところの「地上最強国」は、地上最小国(※ベトナム戦争当時のベトナムの隠喩かも)の一つにおいて、関係者すべてにとって明らかに悲惨である戦争を終わらせることについてはお手上げである。それはまるで、おとぎの国の呪文にかけられて、できることをする能力を失うという条件で「できないこと」ができるようになり、もはや日常の必要に適切に対処できなくなるという条件で夢のように並はずれた偉業を達成できるようになったようなものである。もし権力が、たんなる(われわれにできる)こととははっきり区別された、(われわれが欲し(欲し、は傍点付き)、われわれにできる)ことと何らかの関係があるとするなら、その場合にはわれわれは権力が無力になってしまったことを認めざるをえない。科学によってなされる進歩は(わたしは欲する)とは何のかかわりもない。科学の進歩はそれ自身の冷徹な法則に従うのであって、結果のいかんにかかわらず、何であれわれわれができることをするようにわれわれに強制する。(わたしは欲する)と(わたしはできる)とは対立するようになってしまったのだろうか。ヴァレリーが50年前に「われわれの知るすべてのこと、すなわち、われわれがなしうる力をもつすべてのことは、われわれ自身と対立するものとなってしまったということができる」と述べたのが正しかったのだろうか。
ここでもまた、これらの発展がわれわれをどこに導くのか、われわれにはわからない。しかし、権力のいかなる減退も暴力への公然の誘いであることは、われわれは知っているし、知っているべきである。…それがたとえ、政府であれ、統治者であれ、権力をもっていてその権力が自分の手から滑り落ちていくのを感じる者は、権力の代わりに暴力を用いたくなる誘惑に負けないのは困難であるのは昔からわかっているという理由だけからだとしても。引用以上。
(隠喩、ほのめかし…ではありませんが…ちょっと気になる文章が…ちょっと前のページに出ていましたので…おまけで…引用しておきますね。
161〜162ページ
…中略…
先に見たように、暴力と等値される伝統的な権力概念にしたがうなら、権力は本性上拡張主義的である。それは「成長しようという内的衝動をもち」「成長の本能がそれにとってほんらい的である」がゆえに創造的である。有機的生命の領域では、すべてのものが成長するか、あるいは衰退して死亡するかのどちらかであるように、人間の事柄の領域では、権力は拡張することによってのみ維持されうると思われており、そうしなければ権力は収縮して死滅するというのである。「成長が止まったものは腐敗しはじめる」というのはエカテリーナ帝の側近が伝えているロシアの諺である。王は「暴政のためではなく、弱いために」殺されるといわれる。「人民が断頭台を築くのは、専制にたいする道徳的な罰としてではなく、弱さへの生物学的な(生物学的な、は傍点付き)報いとしてである。」(傍点アーレント)したがって、革命が既成の権力に向けられるというのは「ただ外面的なことにすぎない」引用以上。
文章の中のどこまでがアーレントの思想でどこが他の人の発言か僕にはにわかに判断できません、たまには半分も理解ができない本を読むのも勉強になるかなと思い無理して読みました。乱暴な引用で混乱させたとしたらごめんなさい、お疲れ様でした僕😅)
この本も何かのイモズルだと思いました。自分で探した本ではありません。びすこさんが推してくださった本もイモヅル式で読みたいと思います。 ユートピア思想…僕も人のことは言えないですね。ほとんど人の言うことは聞かない。自分がやって失敗するまでやる。いい年をしてこんなこと言ってる僕は頭のネジが緩んでいるんだと思います。馬鹿は死ななきゃ治らない、はホントのことだと思います😅
偉いなあ、いちまるさん。私生涯ハンナアーレントの著書は読まないと決めているから。(理由はお話するほどのものでも・・・でも文章が嫌いなのも大きい。)
しかしながら、引用された箇所:
権力は本性上拡張主義的である。それは「成長しようという内的衝動をもち」「成長の本能がそれにとってほんらい的である」がゆえに創造的である。
は、同意します。今のプーチンのロシアが典型。それより私、この文を自分の親しい友人に見せたい。彼女によると、日本の防衛力をゼロにすれば中国は安心して、日本の周辺をウロウロするのを止め、穏やかになるはず。防衛力強化は中国へのprovocationだなんて言う。頭のいい人なのに、どこからこんなユートピア思想を、と不思議です。